2019年本屋大賞などを受賞した瀬尾まいこ先生の話題作をマンガ化! 『そして、バトンは渡された』

家族のかたちはさまざまですし、幸せもその人の思いによってそれぞれ。はたから見ると数奇な運命をたどっているように見えても、案外本人はそうは思っていないのかもしれません。

そんな運命のもと生きてきた少女とその周りとの絆を描いた物語が、今回ご紹介する『そして、バトンは渡された』です。本作は瀬尾まいこ先生が書いた同タイトルの小説がもととなっており、田川とまた先生がコミカライズしました。なお、小説版は2019年に本屋大賞などを受賞しています。

主人公は17歳・高校3年生の優子。生まれた時は水戸、その後は田中、泉ヶ原を経て、今の姓は森宮です。継父・継母ともにコロコロ変わり、彼女は血の繋がりのない両親に育てられてきました。

こういう境遇だと、一般的には「大変だね」とか「よくグレることもなく育ってきた」と同情されるところですね。しかし、彼女は誰に同じ質問をされても「幸せです」と答えています。

作品テーマは、人間関係が希薄になりつつある現在におけるコミュニケーションです。実際、登場人物の会話が丹念に描かれています。コミカライズ版ではその傾向がより強く出ており、田川先生が描くキャラクターが、家族とは何かを問うような会話を繰り広げます。

作画を担当した田川先生の代表作には『ひとりぼっちで恋をしてみた』がありますが、何気ない日常を切り取って表現することに長けているという印象です。本作でもその期待に違わぬ画力とストーリー展開力が見られます。

2021年10月29日には永野芽郁さん、石原さとみさん、田中圭さんが出演して映画化されており、こちらも楽しみですね。

【作品データ】
原作:瀬尾まいこ
作画:田川とまた
出版社:文藝春秋
刊行状況:全1巻