箱根駅伝出場を目指す大学の奮闘を描いた『風が強く吹いている』

秋~冬にかけての風物詩となるスポーツといえば、「駅伝」をあげる人も多いでしょう。特に人気なのが男子の学生駅伝で、10月に行われる出雲駅伝からはじまって11月の全日本大学駅伝、翌年お正月に行われる箱根駅伝へとつながります。

箱根駅伝の予選会は出雲駅伝後に行われ、毎年多くのドラマがあります。特に近年ではいろいろな学校が強化に乗り出したことで、常連校でも予選通過ができないことも目立ち、より狭き門となっています。そんな箱根駅伝を目指す新興大学の歩みを描いた物語が、今回ご紹介する『風が強く吹いている』です。原作は三浦しをん先生が書いた同名の小説ですが、これを海野そら太先生がマンガ化しました。

主人公はふたりの大学生。練習中のケガで手術を経験した寛政大学4年生の清瀬灰二(ハイジ)と、高校2年生にして5000mを13分台で走る天才ランナーながら、周囲と衝突を繰り返していた寛政大学1年生の蔵原走(カケル)です。

高校時代はエリートランナーだったハイジですが、練習中のケガが理由で寛政大学に進学することに。そこで駅伝チームを作るため、陸上競技部の寮である「竹青荘(アオタケ)」に人心掌握術を使いながら、ほぼ素人同然の学生を引き入れます。

そこに現れたのがひとりで走り続けていたカケルです。その走る姿に惚れ込んだハイジが声をかけてアオタケに誘って10人が揃い、本格的に箱根駅伝を目指していく物語です。

本作の面白さは、焦るカケルと衝突する住人(他の部員)との心の葛藤、そしてそれらを乗り越えて結ばれた心の絆で、箱根駅伝に挑むべく成長したチームの姿にあります。

三浦しをん先生の原作はもちろん面白いのですが、マンガ版で読むとオリジナルキャラクターも登場。小説で登場するキャラクターもさらに深堀りされています。疾走感が感じられる絵柄なのも感動するポイントです。

2009年には映画化、2018年~2019年春にかけてはアニメ化、2021年には舞台化もされた本作。マンガはヤングジャンプで連載され、コミックスも全6巻刊行されたものの、長らく絶版状態でした。しかし、ファンの復刊を望む声もあり、2020年~2021年にかけて新装版として復刊ドットコムにて復刊されました。駅伝の面白さを知るための作品になりうるので強くおすすめです。

【作品データ】
・原作:三浦しをん
・作画:海野そら太
・出版社:復刊ドットコム(連載時は集英社・ヤングジャンプ)
・刊行状況:全4巻