優しい願いが込められた『バースデイ』は生死をめぐる物語集

誕生日と言えば、日本では案外地味なイベントになってしまった。祝ってもらえたのはせいぜい学生時代までで、その後は自分でも忘れることさえある。本来は「この世に生まれてきてくれてありがとう」という日なのに。
漫画『バースデイ』は、柔らかな死生観が描かれた短い短編集だ。そこにたくさんの誕生や死がある。

人造人間の少女は、壊れては作り直されているために、いくつもの誕生日を持っている。だから自分の命を軽視しがちだったりもする。しかし、自分が危険な目に遭った時に心配してくれる人がいると知った時、彼女は本当の「誕生日」を迎えるのだ。

子供の頃は怖かったオバケ。どうしてあんなに怖かったんだろうと思いつつ、今は世間に流されて生きるだけのふわふわした存在の自分。あのオバケは何を伝えにやってきたのだろうか。ひょっとすると、幼い自分を思い出させるためかも知れない。あの頃の純粋無垢な……。

さまざまな生死が短いページで描かれるが、どれも著者の優しい願いが込められているようだ。生死は人と人とのつながりにも関係する。自分で自分の存在を否定してしまったなら、誰が自分を認めてくれるというのだろう。それでも人は死に、また生まれる。そこには愛があり、友情があり、歪みもある。

生きている限りつきまとう不安や不満、恐怖心や猜疑心などは、死のカタチをしているのかも知れない。そして生は、笑顔や涙、抱擁などでできているのだろうと思わせられる。この世知辛い世の中に、ひっそりと咲く花のような短い物語は、読者をそっと別世界に連れて行ってくれるだろう。もちろん、生きて戻ってくるために。そして自分自身を成長させるために、だ。

【作品データ】
・作者:るぅ1mm
・出版社:KADOKAWA
・刊行状況:全1巻