10月ドラマ放映決定! 中学受験をめぐる裏側を描く『二月の勝者-絶対合格の教室-』

中学受験は家族で乗り切っていく点で、高校受験や大学受験とはまったく異質なものです。そのため、受験生本人より親がのめり込むことがあります。実際、よくできる子であれば親も男の子は男子の御三家(開成・麻布・武蔵)、女の子の場合は女子の御三家(桜蔭・女子学院・雙葉)の合格を夢見ます。

しかし、親世代と子供世代では受験事情も異なっているようです。そこには学校側の方針なども絡んでいます。そんな中学受験の裏側を描いた作品が高瀬志帆先生の『二月の勝者-絶対合格の教室-』です(以下、『二月の勝者』と表記)。本作は「ビッグコミックスピリッツ」2018年1号(2017年12月)から連載され、2021年4月時点でコミックスの累計発行部数が130万部を突破して話題になりました。

物語の舞台は東京・吉祥寺にある中学受験専門塾、桜花ゼミナール吉祥寺校。近くには大手のフェニックスがあります。規模でいえば中小規模なものの、中堅校を狙う生徒にも手厚い点が売りの塾です。そのため、成績の良い児童もいれば学習意欲の低い児童もいます。

中学受験専門塾であれば、評価の指標は「御三家」と呼ばれる学校への合格人数です。しかし、御三家の合格者はゼロに終わりました。そこで、テコ入れをするために大手のフェニックスから移籍したのが新校舎長の黒木蔵人。彼は「学習塾とは、子供の将来を売る場所」と言い放つ冷徹な顔を持ちながら、在籍する生徒にはその学力層を深く理解しながら指導する講師でもあります。

新卒で配属された佐倉真衣は、そんな黒木に反発しつつも少しずつ理解を深め、彼や他の講師陣とともに保護者のメンタルケアにも全力を尽くしていきます。

『二月の勝者』の最大の魅力は、多数の参考文献や取材に基づいている点です。そのうえで、実在する学習塾・模擬試験・中学校などの名前をもじったものが数多く登場するなど徹底的にリアリティーにこだわっています。

個人的に印象に残ったのは、第1巻で保護者説明会・体験会に来たサッカー少年への対応です。黒木は「サッカーも成績も平凡」と言いながら、「何かに熱中したことがある子は受験に強くなれる」とフォローするなど、評価すべき点は評価する一面も持ち合わせています。

その他にも、受験が近づくにつれて両親のメンタルが落ちていく原因とその対処法、中学受験事情に関する基礎知識を黒木が佐倉にレクチャーする場面も描かれており、中学受験を追体験できます。

本作は柳楽優弥さんの主演で、2020年10月にドラマ化される予定でしたが、コロナ禍によって延期となっていました。長期間未定が続いていましたが、この度2021年10月からの放映が決定。ドラマでどのように描かれるのかが非常に楽しみです。

中学受験を考えている人も考えていない人も、一度お読みになってみてはいかがでしょうか。

【作品データ】
作者:高瀬志帆
出版社:小学館(週刊ビッグコミックスピリッツ)
刊行状況:既刊11巻