反面教師にしたい『みんな元気に病んでいる。』で元気になろう!

このコロナ禍で、最近は「コロナうつ」に悩まされている人も少なくないと聞く。

今回ご紹介する『みんな元気に病んでいる。』は、自らもうつ病である著者が描く、心の病を抱えた19人の事情だ。「元気に」どころか、なかなか深刻に病んでいるようだが……。
本作は全体的にライトなタッチで気軽に読ませる、病人たちの物語である。

まずは著者。自身がうつ病や神経症になっているため(今も完治はしていない)、はっきりした理由もなく訪れる病を「深刻になりすぎるのもどうかと思う」とバッサリ。「繊細だからこういう病気になる」とみんなで幸せになろうと励ましている。

もちろん厳密にいえば、抗うつ剤など科学的な治療法が確立されてきたため、うつ病を性格論・根性論だけで語るのは危険な一面もある。あくまで著者個人の感性をふまえた表現と考えれば良いだろう。

著者のほかにも登場人物は、それぞれの事情を抱えている。
子供の頃から優等生だったがゆえに、仕事仲間と打ち解けられずに心身症になった国立研究所員。
母親の言うとおりに生きていたら、EDになってしまった一流企業勤務男性。
過度の自己中が引き起こしたヒステリーで誰にも相手にされないOL。
大金をつぎ込むことだけが愛情表現だと思い込みカード破産した金持ち家庭の大学生。

さまざまな症状を持つ人が紹介されるが、著者の辛口コメントには納得させられる。
「人間とは人と人の間で生きるモノ」だとか、「もっとわがままになっていい」とか、「みんな必死で生きてるんだから」など、名言も頻出する。
それも自身の経験によるものなのだろう。

人間、生きていればいろいろとあるものだ。いいことばかりでも悪いことばかりでもない。
そもそも、いい悪いを決めるのは自分自身なのだ。
他人の意見や視線に振り回されたり、誰かのせいにばかりして自分を正当化したりする人に限って、徐々に精神を蝕まれていくものだ。

生まれながらに心の病を抱えているという人間はいない。生きていて、いろいろな経験をするからこそ、さまざまな影響を受けたりして発症する。
症状の重い軽いはあれど、日本人は心の病を抱えている人が多いように思う。

著者も言う。アメリカのように自分専属のセラピストを持ったり、公に心身症をカミングアウトしても、仕事や人間関係に影響が出ない世の中になればいいと。
真面目で勤勉な日本人なのだから、諸外国よりも心の病のケアに手厚くあってもおかしくはないだろう。

本作で紹介された19の症例はまだまだ世の中の一部にすぎない。
万一自分の心がおかしいと感じたら、迷わず心療内科や精神科にかかることをオススメしたい。
自分自身を知って、きちんと治療を受ければ治らない病ではないのだから。

【作品データ】
・作者:藤臣柊子
・出版社:ビーグリー
・刊行状況:全1巻