非行少年の驚くべき実態を描いた衝撃作『ケーキの切れない非行少年たち』

保護処分となった少年が、更生を図る目的で収容される施設が少年院です。現在の法律では4つの区分にわかれ、12歳以上23歳未満(心身に著しい障害がある場合は26歳未満)の少年が収容されています。

少年の非行事実は、強盗や性犯罪、殺人などさまざま。しかし、そんな少年たちの中には知的発達(認知機能)に問題を抱えている可能性があることはあまり知られていません。そうした実態を描いた作品が、今回ご紹介する『ケーキの切れない非行少年たち』です。

立命館大学産業社会学部の教授で、児童精神科医として現在も医療少年院で臨床に携わっている宮口幸治氏が著した、同タイトルの著書が原作となっています(新潮新書)。ちなみに、新書版は累計で60万部を突破するベストセラーで、カバーの挿絵はコミック作画者のイラストです。

本作の原作案を新書版の著者がコミック用として新たに作っており、『「子供を殺してください」という親たち』(新潮社)を代表作に持つ鈴木マサカズ先生がマンガとして描き下ろしています。

鈴木マサカズ氏の絵柄の特徴は、陰鬱で暗いトーンにあります。社会派・ドキュメンタリー作品に定評がある方なので、このような絵柄になっていると考えられますが、ツイートを見るとやはり賛否両論があるようです。

ただ、表現技術で見ると、キャラクターの表情やセリフについてリアルさを感じさせるような描き方がなされており、個人的には大変興味をそそられます。

新書の中では、先にも書いたように少年院に収容される少年の認知機能について触れられており、ケーキを三等分に分けることができない、図形を正確に書き写すことができない少年が多い実態が書かれています。

マンガ版でもこういった認知機能に問題を持つ少年の実態が描かれていますが、大人も程度の差こそあれ似たような問題を持っていることはあるはずです。多くの方は幸いにして犯罪行為に走ることなく今に至っていますが、一歩間違えていたら犯罪者の方に入っていたのかもしれません。

犯罪者を出さないためにやれることは何かを考えるきっかけとして、小学生~高校生の子供を持つ親御さん、教育に携わる人など多くの人に読んでもらいたい良書です。

【作品データ】
作画:鈴木マサカズ
原作:宮口幸治
出版社:新潮社(※くらげバンチにて閲覧可能)
刊行状況:既刊1巻