【落語マンガ特集】『どうらく息子』から見えてくる落語の新たな魅力

落語とマンガは親和性が非常に高く、落語を扱った作品も数多くあります。これらの作品は、落語初心者はもとよりある程度見慣れている人も楽しく読み進めることができるものばかりです。

その中でも、もっとも落語の世界観を色濃く表しているのが、今回ご紹介する尾瀬あきら先生の『どうらく息子』という作品です。

主人公は大学卒業後なかなか就職が決まらず、保育園で保育助手をしている青年・関谷翔太。保育士を目指しているというわけではないものの、少しでも園児を楽しませるためにいろいろな出し物を考えては園児に披露しています。

イベントの幅を広げるために寄席を訪れた翔太は、惜春亭銅楽の落語に強く感銘を受け、弟子入りを志願。そんな翔太の弟子入り前~前座としての初高座、二ツ目に昇進して古典落語の大作「文七元結」を演じるまでの修行内容や日常生活、銅ら美や錫楽、小銀、師匠でもある銅楽などとの絡みから見えてくる師弟愛が描かれています。

作品の大きな特徴は、一般の人がなかなか見る機会のない修行内容が描かれていること、また落語の内容がそのままマンガとして表現されている点です。

尾瀬あきら先生はもともと少年マンガを主戦場としていましたが、徐々に青年マンガに携わるようになり、中でも1988年に発表した『夏子の酒』は現在でも語り継がれる代表作と言われています。

その他、千葉県成田市の三里塚闘争をテーマにした『ぼくの村の話』など問題提起型の作品が多く、綿密な取材を元にしてストーリーを組み立て執筆していくのが尾瀬マンガの特賞といえるでしょう。

絵柄も非常に線が力強く、キャラクターが力強く描かれています。

落語を聞きはじめたばかりの初心者から、ある程度聞き慣れたベテランの方まで幅広い方におすすめできる作品です。

【作品データ】
・作者:尾瀬あきら
・落語監修:柳家三三
・出版社: ビッグコミックオリジナル(小学館)
・刊行状況:全18巻