【野球特集:前編】メジャーを目指す破天荒な男の物語『フォーシーム』

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近鉄バファローズに在籍していた野茂英雄さんがメジャーリーグに挑戦を表明したのが1995年のこと。その当時は、誰も通用するとは思っていませんでした。しかし、両リーグでノーヒットノーランを達成するなどの活躍を見せ、日本人メジャーリーガーのパイオニアとなりました。

野球マンガの中でもMLBに挑戦した日本人を描いた作品の代表格とも言える作品が、今回ご紹介するさだやす圭先生の『フォーシーム』です。

主人公の逢坂猛史は、日本球界で長年活躍してきた先発投手ですが、36歳で衰えも隠せない年齢となっていました。そんな中、クライマックスシリーズで「お前と心中する。任せた」と言われながら、無死満塁のピンチで交代させられた逢坂は監督の首を吊り上げてしまいます。

これが原因で日本球界からは永久追放同様となり、アメリカのMLBへ挑戦を表明。日本人スカウトのいるオークランド・アスリーツで活躍を目指すと勝手に宣言します。

アメリカに渡ると無死満塁でのリリーフを命ぜられるなどひどい扱いを受けながらも、なんとか信頼を勝ち得てメジャー契約を勝ち取り、自ら「1回のセーブで1ドル、2回目で2ドル、3回目で4ドルと倍々に増えていくインセンティブ方式で、1度失敗するともとの1ドルに戻る」という前代未聞の契約内容を持ちかけます。

そんなビッグマウス・逢坂猛史のMLBでの奮闘を描く物語です。

この作品の見どころはなんといっても、逢坂猛史の活躍にあります。極度の飛行機嫌いの人がMLBに挑戦するだけでも考えにくい話ですが、セーブに失敗すればすべてが台なしになるような契約を自ら持ちかけるというのも前代未聞な話といえます。

これも自分に自信があるからこそできる話ですが、普通の人ならなかなかできることではありません。こうした有言実行型の人には憧れるものの、日本人の性質を考えるとなかなか実践できないでしょう。

また、本作には1981年から2014年まで連載されていた『なんと孫六』の主人公・甲斐孫六との対戦も収録されています。いくら自身の作品とはいえ、他作品の主人公との対戦というのはファンであればワクワクする展開といえます。

さだやす作品のファンの人も、そうでない人も、この破天荒な男の物語の世界観に惹き込まれてみませんか。

【作品データ】
・作者:さだやす圭
・出版社: ビッグコミック(小学館)
・刊行状況:全19巻