弥生時代と怪奇現象の短編集!『水の国幻視行』でロマンを感じよう!

舞台は弥生時代。持っているとその村は潤うという、伝説の「水の鐸」をめぐる物語。干ばつで困っていた南の村の長は、息子のトキに水の鐸を手に入れるように依頼する。トキは水の鐸を持つという伊都国(いとこく)へと発つが、村からの途中の道で狗奴国(くなこく)の戦士に襲われたところを、偶然にも伊都国の第二王子が助けてくれて……。

表題作『水の国幻視行』はトキが第二王子と仲良くなり、最後に裏切って水の鐸を奪うとする物語だが、さすがに王子というのは懐が深く、トキを敵対視せず「貸し出し」という形で決着を付ける。トキは今度会いに行く時は友人として王子に会うことにしたのだった。

『神々の国』も同じく弥生時代が舞台で、友情と愛情をうまく描いている。『ぼくらはKAIKI』は、現代ものではあるが、主人公が引っ越した先には貧乏神がいた。玄関と裏口に御札が置かれていたが……という物語。『夢の代行者』は同じく現代物ではあるが、過去にタイムスリップする設定がワクワクさせられる。

「すこし不思議」で「すこし怪奇」なタイトル四本を収録した短編集だが、それぞれに味わいがあり、好みも分かれるかも知れない。しかしどの作品も読後感は爽快で、特にラストの『夢の代行者』は切なくも深い絆が感じられる。

少女漫画タッチなので、女の子は可愛く、青年は美形だ。しかしキャラクターの描き分けが上手なため、キャラかぶりしないのが良い。

自分の身近にも「すこし不思議」はあるかも知れないし、歴史に興味を持つかも知れない。著者いわく、まだ弥生時代は勉強中とのことだが、他作品も読みたくなるような引きつけ感がある。気軽に手にとって欲しい一冊だ。

【作品データ】
・作者:小栗るみ(くるりんるみこ)
・出版社:ブライト出版
・刊行状況:全1巻