米を吐き出す特異体質、どう使う……?人情派&超常的コメディ『米吐き娘』

主人公は22歳のフリーター・みのり。母親と2人暮らしの彼女は極貧生活だった。その理由は「口から米を吐いてしまう」という超常的な体質だから。米吐きを公言できないから選べる仕事が少なく、勤めてもトラブルですぐ辞めることになってしまうのだ。それでも負けずポジティブに生きるみのりは、米の産地である地元県庁が募集しているキャンペーンスタッフの仕事を見つけて無事採用。米吐き娘が米の消費推進キャンペーンをやるんだから、まさに天職──かと思いきや、その職場は変なヒトばかりで……!?

こんな感じで開幕する本作。実は主人公の体質は『古事記』の神話に登場するオホゲツヒメが由来という意外にしっかりした(?)設定があって、彼女はその遠い子孫らしい。体内から食べ物を生み出し、亡き骸からは五穀が生えてきて日本の農耕のはじまりになった……という由緒あるオホゲツヒメの血を引く主人公キャラクターなのだ。とはいえ本人は年間360kgもの米(しかも精米済み)を所構わず吐き出してしまう体質を迷惑がっていて、せいぜい米を売って家計の足しにする程度にしか考えていないギャップがおもしろい。

さて肝心のストーリーはといえば、みのりと周囲の人々たちがおりなす人情系コメディになっている。なんだかんだで米に愛着があって消費拡大キャンペーンの仕事に燃えるみのりだが、現代の日本人は米離れが進み、同じ課の仲間さえ食事がジャンクフードやサプリメントに偏る始末。そうした人たちに持ち前のバイタリティでぶつかり、少しずつまわりの空気を変えていくエピソードがメインだ。

人間同士の話と並んで、中盤以降は妖怪や神様がちょくちょく登場してくるのも見逃せないポイント。職場の仲間が後頭部からモノを食べる妖怪「二口女」だったり、近所の池でなぜか有名な「乙姫様」と知り合ったり、オホゲツヒメの子孫だと知っている天界の神からスカウトを受けたり、日常生活の中でみのりは超常的な存在と出会う。自分も米吐きという特異体質なので、常識外の相手にも臆することなくコミュニケーションを取ることができ、そのおかげで自然とユニークなストーリーに仕上がっている。

「口から米を吐く主人公」という出オチっぽく思える設定ながら、うまく話を膨らませていった作者の手腕はお見事。ドタバタしながら最終的には誰も不幸にならないお手本のようなコメディ作品で、幅広くいろいろな人にオススメしたい。

【作品データ】
・作者:古林海月
・出版社:ビーグリー
・刊行状況:全2巻