19番目の診療科、総合診療医の活躍を描く新しい医療マンガ『19番目のカルテ徳重晃の問診』

医療機関が標榜できる診療科目には、医療法による広告規制があります。これによると、大枠で表示できる診療科は「内科」や「外科」など18科目。さらに専門を示す「整形」や「美容」、「循環器」などの言葉を組み合わせて38科目まで拡大してきました。

しかし、あまりにも細分化してきたことで、特定の臓器・疾患に限定することなく多角的に診る部門が見直され、誕生した診療科目が「総合診療科(総合診療部門)」となります。そこに属する医師を描いた作品が、富士屋カツヒト先生の『19番目のカルテ徳重晃の問診』です。

舞台は、魚寅総合病院。新設される総合診療科に所属する徳重晃と「なんでも治せるお医者さん」を目指して医師になった3年目の整形外科医・滝野を主人公として、診療科をたらい回しにされる患者さんの病気を見つけて治していく過程が描かれています。

作者は青年誌を主戦場にしており、これまでに『打ち切り漫画家(28歳)、パパになる。』や『ボス、俺を使ってくれないか?』(いずれもヤングアニマル)、『ラブドールズ』(漫画アクション)といった作品を描いています。

これらすべての作品に共通しているのが、不器用そうに見えて実直に一つの物事に取り組む主人公の存在。絵柄にもそれは現れており、一見不格好に見える主人公が躍動しているのがその特色です。

医療系の作品は、原案がしっかりしていないと冗長になってしまうことが多く見られます。本作では、専門を決めたばかりの医師が転科を希望するところからはじまりますが、それに関する本人の葛藤、周囲の心理的な動きもしっかりと描かれている点はポイントが高いといえるでしょう。

医療系の作品は数多いですが、その中でももっとも人間くさいキャラクターを主人公にしている本作は、一度は読んでおいて損はありません。

【作品データ】
作者:富士屋カツヒト
医療原案:川下剛史
出版社:コミックゼノン(コアミックス)
刊行状況:既刊1巻