本当に愛する人は誰?『紺青の鬼』の真実を見抜け!

愛する人が既に誰か他の人のものだと知った時、その失恋を受け入れられるものだろうか?何も知らずずっと思い続けてきた相手、けれど本当のことは何一つ知らない──。4つの短編が収録された『紺青の鬼』は、それぞれに若干異なるテイストながらも、真実の愛とは何かを突きつけてくる。果たして読者は本物を見抜けるだろうか……?

表題作『紺青の鬼』は、平家物語の有名な一節「この世には、青き鬼となりて、身をいたづらになす者おほし。」をベースに敷いた、愛欲の鬼をテーマにした愛憎物語だ。嫉妬に狂い、紺青の鬼となって身を滅ぼす者がいかに多いか、という主人公の心を見透かされたような心理を、好きになってはいけない相手に思いを寄せる女性たちに重ねて描かれている。

身分違いの恋を描いた『幻の女(ひと)』と『メモランダム』は、過去のトラウマや秘密をうまく使ってミステリアスな雰囲気を出している。『娘たちは火の香り』では、一人の男性を思う三人の女性の心模様を描きつつ、炎のような女性の隠された心理を突くような物語だ。

恋愛はそう簡単なものではない。結婚ともなればさらに相手の家族とも深く関わることになる。そこに大きな秘密が隠されていても、最後まで相手を信じて愛することができるだろうか?何も言ってくれない不安や、嘘をついてまで奪いたい嫉妬、他の恋敵を蹴落とす決意など、女性の恋愛は心の強さや非情さがなければ貫き通せない部分も往々にしてあるものだ。

お金や戸籍、過去や嘘などが細部に散りばめられ、真実の愛を見抜く目を試される本作。4つの短編で構成されているが、根底に流れるテーマは同じように見える。あまりにも深く愛しすぎて見えなくなっている何かや未来への不安、自分が本当は誰を愛しているのか──?自分と相手だけでなく、第三者が絡む複雑な恋愛模様に、気が付けば夢中になっているだろう。あなたは真実を見抜けるだろうか?

【作品データ】
・作者:川崎ひろこ
・出版社:ビーグリー
・刊行状況:全1巻