【野球特集】『僕はまだ野球を知らない』に見る野球マンガの新しい形

野球に限らず、スポーツの練習は厳しいものになりがちです。しかし、そんな厳しい練習もどのように活きてくるのか理論的に説明してもらえたら、どのように上達しているのかが分かったら自分からやるようになるでしょう。

野球には「セイバーメトリクス」があります。これは何かというと、各選手の守備範囲、周辺視野などをデータ化したもので、日本でもデータスタジアム社などがプロ野球の分析で用いています。これを活用して弱小都立高校を強豪にしようと奮闘する監督・チームの姿を描いた作品が、西餅先生の『僕はまだ野球を知らない』です。

ストーリーとしては、弱小都立高校が強豪校に挑んでいくというもの。野球に限らずスポーツを題材にした作品であれば、いわば王道です。しかし、その強化方法として根性論・精神論に頼るのではなく、「野球の統計学」と呼ばれるセイバーメトリクスを使っているのが、今までの野球マンガとは違うところでしょう。

作品内では、打撃でいえば体重移動を、投球でいえばボールの軌道や回転を分析して、選手に特性の活かし方や練習方法について根拠を持って解説しています。また、高校生であればいろいろなものに目が移りがちですが、野球以外に目が移っているときにどのようにして野球に集中させるかという点もしっかりと描かれています。

西餅先生の絵柄に関してはあまり描き込まれていない点も多く、評価は分かれるところだと思います。しかし、データを活用して、チーム作りにどのように活かしていくかという点では、非常によく練り込まれており、ストーリーテリングという点では高く評価できるのではないでしょうか。

せっかく収集したデータも、活かせる人がいなければ宝の持ち腐れとなります。本作には、その活かし方が作品内に盛り込まれているので、野球マンガとしての側面と「野球とデータ」をテーマにした教科書という側面の二つを一度に楽しめる良書です。

【作品データ】
・作者:西餅
・出版社:講談社
・刊行状況:全5巻