ネットで有名な「やったねたえちゃん!」が、まさかの全年齢向け漫画として復活

「そんな装備で大丈夫か?」など、特定の漫画やゲームに登場した台詞が長く汎用的にネット上で使われることがある。俗に”ネットスラング”と呼ばれるものだ。今回は漫画発祥の有名なネットスラング「やったねたえちゃん!」が数年の時を経て、そのまま同じ作者により『やったねたえちゃん!』というタイトルで復活したニュースをお伝えしたい。

(※一部で成人向け要素があるため、了承いただける方のみ続きをお読みください)

そもそもの発端になった漫画は、カワディMAX氏が過去に発表した18禁短編作『コロちゃん』。主人公は両親のいない少女・たえちゃんで、母からもらった思い出の品であるクマのぬいぐるみ・コロちゃんだけが唯一の話し相手だった。やがて叔父が彼女の引き取り手として名乗りをあげ、喜んだたえちゃんはコロちゃん(本当は自分の心の声)から「やったねたえちゃん!家族がふえるよ!!」と祝福される。

しかし引き取り手の叔父はとてつもない鬼畜で、たえちゃんは暴力的な欲望の餌食になってしまう……という救いようのない展開が読者に多大なトラウマを植えつけた。

この作品で幸福のピーク時に発せられた「やったねたえちゃん!」がネットでも広まり、有名なスラングの1つとして定着していった。おもにネット掲示板などの幸せそうな文脈で「やったねたえちゃん!」と書き込まれ、元ネタの凄惨なラストを知っている別のユーザーが「おいやめろ」と釘を刺す。この一連の流れがテンプレート化していったのだ。

そして時は流れて現在、まさかの作者本人による続編が登場することとなる。ジャンルを絶望系の成人漫画から、『必殺仕事人』めいた復讐系バイオレンスアクションに変えて。

掲載誌は紙媒体の「月刊コミックフラッパー」。またはウェブ媒体なら「ComicWalker」で読むことができる(いずれもKADOKAWA)。

オリジナル版では幸薄い無垢な少女としか描かれなかった主人公たえちゃんだったが、実は彼女の中には本人すら知らない別人格が潜んでいて、ゲスな男を容赦なく殺すという設定が追加された。体格にすぐれた男を倒すため、素手の格闘術だけではなく、コロちゃんの中に仕込まれたワイヤーによる切断技も使いこなすというトンデモ発想に驚かされる。オリジナル版の鬼畜叔父も、続編プロローグでは輪切り状態の死体で発見されるが、まさか保護された少女のたえちゃんが手を下したとは警察も想像できなかったらしい。

続編には新たな鬼畜男として、たえちゃんが転校した学校の教師が登場。新しい環境になじめないたえちゃんに表面上は優しく接するが、自宅に招いて飲ませた紅茶には睡眠薬が入っていた。体の自由を奪われたたえちゃんに教師の毒牙が迫るとき、彼女の中に眠っていた”殺戮者”が目を覚ます――!というのがストーリーの流れだ。

ここから先は実際にネットで無料公開されている第二話までを読んで判断いただきたい(成人指定はないがエログロに注意)が、おおむねネットユーザーの反応を見る限り好評な様子。蹂躙されるだけと思われていた少女が圧巻の反撃を見せるシーンは、たしかに一種のカタルシスが感じられる。

ちなみに「やったねたえちゃん!」とは別に「トラウマブレイカー」というネットスラングもあり、みんなのトラウマ元になった作品の鬱展開などを吹き飛ばしてくれるコンテンツに付けられている。今回話題となった新作『やったねたえちゃん!』はネットユーザーのトラウマを呼び起こすのと同時に、トラウマブレイカーとしての役割も持っていると言えるだろう。