近未来SF『天使失格』は不思議も冒険もてんこ盛り!

2126年、トーキョーベイシティ。嵐(ラン)は夢の中で天使に出会った──。目が覚めるとそこは自宅。アメリカ出張の母親を見送って、学校にでかける途中、用水路から奇妙な手が出てネズミを捕まえるのを見た。50年ほど前に「バイテク(バイオテクノロジー)バブル」と言われた時代があり、さまざまな生物が作られたという。それらが下水道に逃げ込んで増殖しているという都市伝説があったが……。

ランの友人で武闘派な三好と、頭脳派な燕(エン)は、一緒に仲の良い女子生徒に頼まれて猫を探すハメになる。エンの所属する生物部にある秘密の通路から地下に入り、下水道を歩いていると、得体の知れない生物に襲われて仲間たちとはぐれてしまうラン。しかしそこへ全裸の少女が降りてきて謎の生物を倒して──!?

本作『天使失格』はSF、ファンタジー、ミステリー、ラブコメの入り混じった、世界観のよく練られた作品だ。2126年という未来を舞台に、東京を巨大タワー内の隔離都市にしている点も見逃せない。ちょうど今年が2020年ということもあり、じっくり読んで欲しい濃い内容が詰まっている。一冊で完結しているからこそまとまりがよく、無駄がない。

ただ美少女が空から降ってくるだけのラブコメではなく、謎めいた存在や陰謀が渦巻く東京という都市。正体不明の少年や、彼がつぶやく言葉にも伏線が張られていて、どんどんと読み進めてしまいたくなる。少女漫画でもSFやミステリー要素を取り入れた作品は少なくないが、深みのある作品は長編になりがちだし、短編では内容も薄くなってしまう。そのバランスを見事に取っている点が秀逸だ。

謎は徐々に解かれつつ、新たな事実が読者に突きつけられる。果たして彼女は何者だったのか?何のために存在したのか?近い未来に想像しうる事態は?ぜひ本作を最後まで読んで、彼らの波乱万丈な冒険をしっかり見届けて欲しい。

【作品データ】
・作者:服部あゆみ
・出版社:ビーグリー
・刊行状況:全1巻