【医療マンガ特集:第1回】薬剤師のリアルがわかるマンガ『アンサングシンデレラ 病院薬剤師葵みどり』

病院ではさまざまな資格を持った職員が活躍しており、その専門知識を活かし1つのチームとして患者さんの診察・治療にあたる「チーム医療」という考え方を取り入れて実践しています。その中で、治療に使う医薬品の調剤を行い、薬剤を扱うプロフェッショナルの観点から治療に対する方針を提案するのが、薬剤師の役割です。

今回ご紹介する『アンサングシンデレラ 病院薬剤師葵みどり』の主人公は、総合病院に入職して2年目の26歳。そんな彼女は、病院の中で常に患者さんのことを気にかけ、退院後も健康に生活できることを目指し治療に関わっています。

物語は「大学6年間必死で勉強して、国家試験受けて資格とって希望してた総合病院にも就職できた。でも私、このごろ思うんですけど。もしかして薬剤師っていらなくない?」というところからはじまります。

病院の中でも治療の中心にいるのは、医師や看護師がほとんどです。薬剤師はどちらかというと、そのタイトル通り「縁の下の力持ち」というような存在といえるでしょう。「unsung hero」という単語には、そのような意味があります。

医療マンガは多く、ドラマ化された作品を見ても『町医者ジャンボ』や『Ns’あおい』などがあります。しかし、いずれも主人公は医師や看護師で、薬剤師にスポットを当てた作品は皆無でした。

ちなみに、2016年末時点で勤務している薬剤師は約30万人。その中で、病院で働いている薬剤師は約2割弱います。

本作は、その病院薬剤師にスポットを当てた作品です。

作者の荒井ママレ先生は、2011年に『おもいでだま』でデビュー。その当時からかわいい絵柄に定評がありました。

本作でもそのキャラクターのかわいい絵柄に評価が集まるとともに、医療監修の富野浩充氏とともに作り上げたストーリーテリングも好評で、実際に起こりそうな医療現場の雰囲気を作り上げています。

たとえば作品内では、患者さんの治療で使用する医薬品を巡って医師と薬剤師が意見交換する場面、ある患者さんを担当する薬局薬剤師と病院薬剤師が対立する構図が描かれています。

外で見ている私たちは「同じ免許を持っているのに」と思うかもしれません。しかし、病院と薬局では仕事内容や立場が異なります。こうした立場の違いによる対立は地域によってあるようで、そうした場面も包み隠さず語られているのです。

医療作品のように専門用語が多くなりがちな作品では、その言葉の意味がわからなければ読み進めにくいという点が問題となります。しかし、この作品ではそうした専門用語にはわかりやすい解説がついており、安心して読み進められる作品です。

実際に医療従事者の間でも評価が高い作品で、医学書院の『治療薬マニュアル2020』とコラボした小冊子が全国の書店で配布されるなど、その人気にさらに火がつきそうな勢いとなっています。

実際に勤務している薬剤師さんなど医療従事者であればその内容に思わず「あるある」とうなずく所も多く、薬学生であればそのモチベーションを上げるための作品となりうるでしょう。

医療従事者以外の人であれば薬剤師のリアルを知ることができる貴重な作品といえます。

今年4月からは石原さとみさん主演でドラマ化されるようです。まだ概要は決定していないので、当サイトでもどのような配役になりそうかなど書いていきたいと思います。

【作品データ】
・作者:荒井ママレ
・出版社:コミックゼノン(徳間書店)
・刊行状況:既刊3巻