【百合特集:第1回】思わず胸がキュンとなるOL百合『定時にあがれたら』

「職場に気になる人がいたことがある」という人は、意外と多いのではないでしょうか。

今回ご紹介する『定時にあがれたら』は、そんなOLの恋模様を描いたオトナ百合の物語です。

(※)「百合」とは、女性の同性愛を意味する言葉。

主人公は、同じ会社の営業部で働く湯川さんと企画部で働く水城さん。

ほんわかした雰囲気の湯川さんは、サバサバ美女でバニラの匂いがする水城さんのことが気になって仕方ない様子。しかし、最初は名前も知らないどころか声さえかけられない状態でした。

そんな彼女たちは、ポケットに入っていた自宅の鍵を届けに行ったことがきっかけで付き合うようになります。その後はお互いのコートに入れた付せんを介してデートを重ねていく二人。

二人は、職場に行けば毎日会うことができます。それが楽しみな半面、仕事が忙しくなっていくことでなんとなく距離感ができることで落ち着かなくなったり、嫉妬心が出てきたり…。

とても不器用な恋ですが、少しずつ手探りでお互いの距離を縮めていきます。

心理学では、「結婚に至るまでは6段階の過程がある」と言われています。

1. 類似性
2. 関係性づくり
3. 自己開示
4. 役割取得
5. 役割適合
6. 結晶(結婚)

結婚でなくても親友ができるまでには、同性・異性に関係なくみんなこの過程を経て仲良くなっていくはずです。

どこかもどかしい思いを抱えながら、少しずつ相手の気持に気づき、相手を思いやるようになってますます好きになる。

恋愛はその繰り返し。

当然といえば当然のことですが、この作品に改めて教えられたような気がします。

そんな二人の恋模様を描くのは、犬井あゆ先生です。

この作品の最大の魅力は、多くの人がこれまでに経験したことのある恋愛感情を丹念に描いている点にあります。

最近の作品にしては珍しく背景はあまり描かれていませんが、キャラクターの絵はかなり丹念に設定され描かれている印象です。

作者もLGBTの当事者なので、「実際にこういう感情を抱いちゃうかも」というようなことが描かれているので、思わずキュンとなるばかりか先を読み進めたくなります。

最近の百合作品は良質なものが増えていますが、『定時にあがれたら』はその中でも最高級な作品です。

最近好きな人ができた人に、ぜひ読んでもらいたいと思います。

【作品データ】
・作者:犬井あゆ
・出版社:祥伝社
・刊行状況:既刊2巻