倫理とは哲学なり?! 『ここは今から倫理です。』で生徒の心を潤す教師に光を!

【あらすじ】
倫理教師の高柳は、影が薄く控えめな印象。しかし、学生時代に習ったところで将来役に立つかどうかもわからない「倫理」という教科を通して、生徒や教師たちにさまざまなことを考えさせ、直接手を差し出すことなく快復させるという、ヒロイックなストーリーだ。

【みどころ】
学校とは不思議なところである。本来は勉強をする場所でありながらも、友情や恋愛などの人間関係を築いたり、部活で精神や肉体を鍛えたりもする。年齢を重ねるにつれ、家の近所の子供だけだった小学校から、それがいくつか集まった中学校になり、高校では電車通学するほどの距離の相手とも知り合うようになる。

そんな高校に入って初めて習う「倫理」という教科にスポットを当てた漫画が『ここは今から倫理です。』だ。倫理教師の高柳がさまざまな生徒の心の闇や悩みを溶かしていく、というとなんだか彼がヒーローのように思われるが、高柳はやや陰鬱な印象でおとなしく表情も乏しい。

教師は生徒に舐められがちだが、声を荒らげればパワハラだと言われ、暴力を振るわれてもやり返せない立場だ。女子生徒に対しては、たとえ慰めであっても接触するだけで懲戒処分の対象にすらなり得る。教師と生徒が打ち解け合うのは非常に難しいと言えるだろう。

さらに高柳の受け持つ「倫理」という教科は「哲学」に近く、ソクラテスや老子などの言葉が引用される。周囲の人間がすべてつまらない人間に思えたり、人間を愛せなくてぬいぐるみに依存したり、SNS上の誇張した人格を守るのに必死だったり、自分が寂しいと感じていることすら気付けなかったり、平凡な生き方から脱却したいと無意識に思っていたり……どれも他人事ではないだろう。

高柳は生徒には何も強要しないし、説教もしない。しかし、その口から出る言葉には説得力があり、頑なになっている生徒の心を優しく温める。学校ぐるみでいじめの事実を隠蔽したり、教師も知らない、気付かないで済ませてしまう今の日本を見ると、やはり高柳は現代のヒーローかも知れない。

【作品データ】
・作者:雨瀬シオリ
・出版社:集英社
・刊行状況:1〜3巻(以下続刊)