権力者の腐敗を暴くスーパー公務員!『内閣権力犯罪強制取締官 財前丈太郎』

政治家や官僚、大企業の汚職ニュースが後をたたない現実社会。だが必ずしも全員が厳罰を受けるわけではなく、イライラしている国民も多いだろう。悪いことをしても逮捕・起訴されない特権階級を皮肉った「上級国民」なんていうネットスラングも生まれるほどだ。そこで今回は、スッキリ気分になれる痛快作『内閣権力犯罪強制取締官 財前丈太郎』を紹介したい。

主人公の財前 丈太郎は、日本版FBIとも言われる「内閣権力犯罪強制取締局」に所属するタフな男。権力を利用して私服を肥やす悪者たちをあらゆる手段で追い詰める、異色な部署のエースである。

物語の冒頭でベテラン国会議員と大手ゼネコンの癒着に目をつけた丈太郎たち取締局メンバーは、内部告発者ルートから捜査を開始。だが勇気ある告発者が襲われて殺されかけるなど、いきなりキナ臭い展開に巻き込まれた。見事な手腕で少しずつ不正の証拠を固めていく丈太郎だが、相手もまた利権を守るため全力で捜査を妨害してくる。立ちはだかる敵は汚職政治家や大企業、ヤクザ、マスコミ、暗殺者、さらに味方であるはずの「国家」まで! 果たして丈太郎たちは、この国の内部にはびこる巨悪を葬り去ることができるのだろうか……?

こんな感じで政治劇と犯罪捜査、アクションをメインにした痛快娯楽活劇なのだが、なんと言っても主人公・丈太郎の強烈なキャラクターが一番の見どころなのは間違いない。

ざっと彼の特徴を並べてみるが、

・マッチョでクールな美男子
・一度でも視界に入ったものは決して忘れない記憶力
・あらゆる国家機関を捜査に協力させる権限が与えられている
・世界でも王族クラスしか持てないはずの「限度額が無制限」クレジットカードを個人所有
・世界最強の特殊部隊、SAS入隊経験あり
・職業暗殺者と互角に戦える格闘技の腕前
・危機を事前に予測できる鋭い直感
・トッププロ級の射撃術と運転技術
・どんな絶望にも負けない鋼鉄の意志
・女を口説かせても超一流
・記録のうえでは「3年前に殉職しているはず」

いくら架空のキャラとはいえ、よくここまで盛りまくったなという最強の公式設定である。逆にいえば、このくらい化け物じゃないと太刀打ちできないほど、彼の敵は強力ということだ。

なにせ黒幕の政治家や大企業は、不正の証拠をにぎった内部告発者を平気で殺してしまうほど冷酷。権力と財力に暴力まで備えた悪党の捜査妨害は並大抵ではない。だが強靭な正義感で立ち向かう丈太郎のそばには、いつしか仲間が増えていった。その多くは彼と同じく腐敗に対峙する覚悟をもった公務員や、トカゲのシッポとして消されかけ丈太郎に保護された告発者など。一人ひとりの力は強くないが、丈太郎という最高のタフガイに惚れ込み、それぞれ得意なスキルを駆使して捜査を進展させていく。

原作者が元刑事という経歴のため、警察や国家組織の描写はきわめてリアル。そして丈太郎と敵側の刺客によって繰り広げられる怒涛のバトルは、『北斗の拳』でのアシスタント経験もある作画担当者が見事に描ききっている。素手の体術、武器、兵器まで飛び交う戦闘シーンは圧巻だ。

なお政治ドラマを取り入れたアクション漫画といえば『ゴルゴ13』『マーダーライセンス牙』が有名だが、あちらは基本的に国際政治が舞台。本作のように国内政治をメインに扱い、しかも「権力者の腐敗」にフォーカスした作品はきわめて珍しい。

全体を通じて多くのエログロ、バイオレンス要素があること、終盤の展開がやや駆け足だったことなど、読者を選ぶ部分はたしかにある。しかし読み応えと面白さは保証できるので、重量級のアクションドラマを求めている人はぜひチェックしてみて欲しい。

【作品データ】
・原作:北芝健 作画:渡辺保裕
・出版社:新潮社
・刊行状況:全17巻