RED 1 (アッパーズKC)

悲しみと憎悪を抱えて進む男の復讐劇『RED』

RED 1 (アッパーズKC) 【あらすじ】
舞台は19世紀、開拓時代のアメリカ。ある日現れたたくましい長身の赤い肌を持つネイティブアメリカンの旅芸人、レッド。陽気にふるまいながら圧倒的な戦闘力をもつ彼の目的は、ただ自分の一族を全滅させた騎兵連隊への復讐だった。その戦いに善悪はなく、救いもなく、希望もない。レッドは報われない戦いの中で何を手に入れるのか……

【衝撃の村枝賢一作品】
村枝作品といえば『俺たちのフィールド』『光路郎』『機動公務員かもしか!』、そして故石ノ森作品の新解釈『仮面ライダーSPIRITS』など勧善懲悪、正しい行いは必ず報われるストーリーが多いですが、『RED』はそれらの作風を根底からひっくり返した驚きの一作です。

主役であるレッドは徹頭徹尾「復讐」を目的としており、そのためなら自身が傷つくことも恐れません。常に一人での行動を選ぶのは、余計な仲間を作ることで戦いに巻き込んだりさせないため。一族を殺された彼の絶望はいつも深く、ただ復讐のために生きる彼は村枝作品の異端児といえるでしょう。

【巨大拳銃――HATE SONG】
本作を代表するシーンに拳銃「ヘイトソング」をレッドが初めて撃つシーンがあります。非力な女性が撃てば肩が外れ、排熱もままならないために握った手を皮膚ごと引き剥がさなければとれない大砲のような破壊力をもつ拳銃。「憎しみの歌」と名付けられたそれは彼の執念を代弁する様に銃声で歌い続け、村枝氏の画力も相まって作中の戦闘シーンを圧倒的なものにしています。

【敵、そして友】
レッドの一族を全滅させた騎兵連隊、彼らは一枚岩ではありません。あるものはその殺人の快感に酔いしれて殺し足りないと考えていますし、あるものはその戦闘を虐殺だと悔いて贖罪の道を模索します。それは時にレッドを傷つけ、救うこともあります。単なる記号としての「復讐対象」ではなく、一人一人が血肉のある人間として生々しく描かれているのも本作『RED』の特長です。

そして復讐の最中、単独行動を信条としてきた彼にも友ができます。西南戦争から逃げてきた日本の侍や、かつて大道芸人として身を立てた拳銃使いだった娼婦。銃とは無縁の生活を送ろうとしていた彼らはレッドとの出会いでもう一度武器を手にしてその旅に無理やり同行します。その出会いがレッドの復讐劇にどう影響するか? 敵味方それぞれのドラマも大きな見どころになります。

【類似作品との違い】
復讐を中心とした作品である『ベルセルク』における主人公・ガッツは、まだ彼にとって救いである「愛する人の生存」という要素がありました。ほぼ同じ時代を描いた『修羅の刻』アメリカ編のように復讐の後、救ってくれる仲間も彼にはいませんでした。

繰り返しますが、この作品は悲しく報われない男の復讐劇です。読後感は人によっては悲しいでしょうし、人によっては爽快でしょう。筆者としてはその結末まで読んで、そして村枝氏の魂を堪能していただきたいと切に願う作品です。

【作品データ】
・作者 :村枝賢一
・出版社 :講談社
・刊行状況:全19巻(完結)

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