意地悪にも負けない!『かんなのおうち』を建てるため!

建築士のかんなは、大工の夫と結婚した。しかし入籍3ヶ月で夫は事故死してしまう。先代の社長も早くに亡くしている義母は、経営者として夫の残した工務店を切り盛りしているが、かんなは夫を亡くしても出ていこうとはせず、むしろ義母に「大工になりたい」と言い出して──?!

夫を亡くしても明るく振る舞うかんなに、工務店の社員たちは呆れた様子で冷たく当たる。しかし死んだ夫との約束を果たすために大工になりたい気持ちは本物だ。義母が反対するなら棟梁に直接掛け合って弟子にしてもらおうとまで考えるその想いは、熱い情熱と亡き夫への愛に満ちている。

建築士という立派な肩書を持ちつつ、若社長の未亡人であり、大工の仕事や家事までこなす懸命なかんなと触れ合ううち、少しずつ社員たちの態度が柔らかくなっていく。大工道具の「カンナ」のように、滑らかにしてうまくなじむよう自然と振る舞える彼女に、皆の仲間意識が芽生え始めたのだ。

一つの芯として嫁姑問題があからさまに描かれ、また男尊女卑や職種による差別、女性同士の嫉妬による嫌がらせなど、身近な問題がさりげなく散りばめられている本作。しかし、主人公のかんなが明るく前向きで、亡き夫との夢だけを糧に難問を乗り越えていく姿は、誰しも応援したくなるだろう。

かんなは一人の人間としてとても魅力的だ。一朝一夕で大工になれるはずもなく、多くの仕事を一手に引き受けなければならなくても、弱音一つ吐かずに努力を重ねる。自分のどこが悪いのかを考え、周囲の人からの話も真摯に聞き、正しいことは貫くまっすぐさはまぶしいほどだ。涙を流してもしっかり自分の足で立っているたくましさも備えている。

誰でも私情を挟んでしまいがちな家庭と仕事の問題だが、だからこそ本当の「人間力」が試されるのではないだろうか?たとえ大工としてのかんなが未熟であっても、職場には違う形で必要とされるようなまとめ方には涙がにじむ。どんな時も前を向いていることの大切さを思い知らされる作品だ。働く女性でも、専業主婦の立場でも、さまざまな立場からの角度で見え方が変わるだろう。

【作品データ】
・作者:佐藤こず枝
・出版社:A-WAGON
・刊行状況:全1巻