宇宙のサカナ『ヴァガボンド・フィッシュ』は地球を救う運び屋の冒険譚!

宇宙に焦がれ、地球で息苦しさを感じていたミスティは、偶然出会った宇宙間運び屋のキースと共鳴する。そこにはハッキリと宇宙が見え、これまでさまざまな方法を試してもどこかで操られているかのように超えられなかった壁が、キースによって超えられそうだと直感でわかった。自慢のESP並の勘と運でカジノで稼ぎ、あっという間にキースが提示した金を集めたミスティ。女は船に乗せられないと言うキースだが、見た目に反してミスティはれっきとした男だった。

少女漫画ではあるが、舞台は未来の宇宙というSFファンタジーの冒険譚になっている。有名な運び屋・キースは、女は船には乗せないし、女は殺さないという見事なフェミニスト。しかし、なんだかんだとキースにつきまとい、なんとか相棒としての資格をえたミスティは、ますます大きな宇宙規模の黒い陰謀に巻き込まれていく。

少女漫画にしてはよく練り込まれたSFで、地球では息苦しくて宇宙に出ることをこいねがうミスティは「宇宙のサカナ」と思われた。あちこちで危険な依頼を受けつつ、ミスティの持つ天性の勘とキースとのシンクロで何度も窮地を乗り越える。この爽快感は、なかなか本格的でワクワクさせられる。

主人公の二人は男だが、ミスティの女性らしい容姿や、地球の守護者であるマザーコンピュータのアリエル、ミスティの姉のシェイディなど、押さえたいところで登場する女性キャラクターが魅力的だ。何度も立ち向かう敵の女性も印象深い。それぞれに個性がある上に、描きわけもうまく、「恋愛ばっかりの少女漫画はなー」と物足りなさを感じていた人にはうってつけだろう。

ミスティとキースの掛け合いはもちろん、他のキャラクター同士の絡みは時にコメディタッチで描かれ、適度な息抜きをしつつも最終的にはシリアスな最終局面へと突入していく。宇宙船での攻防や人対人の撃ち合い、騙し合いなどでうまくテンションが底上げされていき、読み終わる頃には一緒に宇宙を冒険した気分が味わえそうだ。

【作品データ】
・作者:浜田翔子
・出版社:ビーグリー
・刊行状況:全2巻