閉鎖空間で追い詰められる絶望のバイオレンス・ホラー『第七圏』

舞台は現代日本。とある刑務所に収監されていたはずの青年(主人公)は、気がつくと見知らぬ場所にいた。着衣は囚人服のままだが、胸の受刑者番号が「0-7-0」に変わっている。場所は元いたのとは別の監獄らしき部屋。壁には謎の「七」というマークが書かれている。自分自身に関する記憶はなぜか全部忘れてしまった。同じようにとまどう他の囚人仲間とともに、脱出口を探しはじめた主人公。そんな彼らの前に立ちふさがったのは、看守服を着て顔に袋をかぶった異形の怪人だった――!

こうして訳のわからないまま、理不尽なサバイバルを強いられるところから物語は始まる。難解な構造をした閉鎖空間は往年の大ヒット映画『キューブ』、不死身の殺人鬼に追われる恐ろしさは映画『13日の金曜日』『ハロウィン』などが思い出され、それらの要素をうまくミックスしたようなホラー漫画だ。

本作の一番の見どころは「地獄看守」と呼ばれる殺人鬼の強烈なインパクトだろう。頭部をすっぽり黒いビニール袋で覆い、むき出しの腹部には常人なら死んでいるはずの深い傷跡、手には大型のガンタッカー(大型の針を打ち出す建築工具)を装備。なにも喋らず、ただ迷い込んだ主人公たち囚人を探して襲う。必死に反撃しても効いた様子はなく、無慈悲に1人また1人と消されていくのだ。こんなのが目の前に現れたら……と想像するだけで震えてしまう。

加えてもう一つの恐怖要素が、謎の閉鎖空間である。本来あるべき出口が部屋にない。仕方なく壁を壊しても、出口は見当たらないわ地獄看守と出くわすわ、さらに壊したはずの部分が直っているわ、どう考えても物理的におかしい。途中で登場した新キャラによって「ここは出口のない地獄だ」「お前たちはもう死んでるんだよ」という情報がもたらされ、ますます混乱が深まっていく。

たしかに第1話のプロローグには死刑執行シーンがあったし、作品タイトルもダンテの『神曲』に記された第七圏(暴力者が落ちる地獄)を連想させる。それなら登場キャラが囚人服で、ほぼ全員悪役顔なのも納得だ。まだ作品は継続リリース中だが、いずれこのあたりの真相も明らかになってくるだろう。

かなりエグい残虐シーンがあるため読者を選ぶかもしれないが、フルカラーで描かれた恐怖演出、異常さを極めた殺人鬼のビジュアル、追い詰められていく人間たちのリアルな心情描写、謎が謎を呼ぶミステリアスな世界観など魅力は多い。少しずつ忍び寄ってくる『リング』のような日本的ホラーより、もっと直接的で派手な洋風パニックホラー要素を楽しみたい人には、ちょうど良い一作だと自信を持ってオススメしたい。

【作品データ】
・原作:ミナミ 作画:ヒカリ
・出版社:ソルマーレ編集部
・刊行状況:12話まで(以下続刊)