本当の運命の人は誰?『ウェディング・パフューマー』で真実の恋愛を見つけよう!

香の老舗「麻生堂」の一人娘の唯子は、普通に漂う香りだけでなく、男性の下心のニオイまでわかるほどの嗅覚の持ち主。女の子なら誰でも持っているという運命の相手を嗅ぎ分ける力だが、唯子はそれが異常に秀でているらしい。おかげで19年間彼氏ナシ。変な男に引っかかったことはない代わりに、恋の醍醐味と言える失恋の経験さえなかった。

天才的な嗅覚センスのせいで、当主の祖父のもとには製薬会社や食品会社その他大企業の偉い人が、息子の結婚相手になって欲しいと押し寄せる日々。祖父は「麻生堂」の跡継ぎだけを重視し、唯子の気持ちなどお構いなし。「嫌いなニオイの人と結婚なんて無理」と拒む唯子に祖父は半年の猶予を与え、その間に自慢の嗅覚で運命の相手を見付けて来いと言う。唯子にはもう、それしか逃げ道がなく──!?

友人に頼んで、これまで避けてきたお見合いパーティーでひどい出会い方をした相手は綿貫哲という青年。香水学校に通い、2年も研究室にいてパフューマーを自称しているが、あまりにも香りのセンスがひどすぎる。案外モテる哲だが、自分はどうしても相手を好きになれないため、惚れ薬を作りたいらしい。しかし唯子は気付いてしまう。哲から香ってくるただならぬ魅力的な匂いに。そして、それが初恋の相手に似ていることにも……。

跡継ぎ問題や運命の相手など、少女漫画にありがちな要素をうまく入れ込んで、絵で匂いを描いている点が秀逸な作品だ。二人の微妙な距離感の変化にもときめきがあり、パッピーエンドには希望を見いだせるだろう。

同時収録の『未来のコンパス〜恋愛ジャッジ〜』は、カリスマ占い師を父に持つ加奈が、運命の相手を見つけるまでを描く物語だが、表題作よりはドタバタコメディ色が強く、しかしグッとくるシーンも盛り込んで見せどころが押さえられている。

7歳も年下の小学生が運命の相手だと言われ、仰天する加奈と、その相手とされた修吾。父親は彼を自分の病院の跡継ぎにさせたいが、母親は自分の会社を継がせたいと言って加奈の父の占いを頼って来たらしい。しかし、修吾本人は政治家になってそのトップに立ちたいという大きな夢を持っていた。

ここでも跡継ぎや運命が出てくるが、シリアスとコミカルの描き分けで受け入れやすい。しかも、占い師の父を持ちながらも占いを否定し、その反面では学問であるという風水はOKという都合のいいポジティブ思考の加奈が、悩める修吾に「運命は自分の手で変えていくんでしょ!?」と風水コンパスを渡すシーンは感涙モノ……の直後に爆笑させられるような方向転換にも好感が持てる。

何事にも裏と表があるように、良いことも悪いこともある。しかし、最終的に自分の望む道や寄り添いたい相手は、自分で見つけ出すものなのだと思い知らされる、夢見る少女が目覚める瞬間を収めた作品だ。

【作品データ】
・作者:吉沢蛍
・出版社:グループ・ゼロ
・刊行状況:全1巻