舞台はゴブリンなどの魔物が人の生活をおびやかす、中世ファンタジー風の世界。そこに生きる人間は、神から与えられた力(スキル)をそれぞれ持っている。
主人公の少年・フェイトは「暴食」という、腹が減りやすいだけの三流スキルしか持たず、雇われの門番として不遇な人生を歩んでいた。そんなある日の仕事中、たまたま侵入してきた盗賊を倒したことで運命が一変する。暴食スキルが真の力を発揮し、殺した相手の「全ステータスと所有スキル」を吸収したのだ。こうして戦うほど強さが加速するようになったフェイトの冒険が幕を開ける──!
そんな形ではじまる、王道からちょっと逸れたバトルファンタジーが『暴食のベルセルク』だ。原作はマイクロマガジン社から刊行されている同名の小説だが、さらに元をたどればウェブ小説投稿サイト「小説家になろう」で連載中の作品がオリジナルとなる。
特徴的なのはやはり主人公が持つ暴食スキルで、一般的なゲームやファンタジーラノベでいえばチート(反則)級に分類される凶悪なもの。ただ、いわゆる「俺つえー」系の作品によくある単純なチートスキルではなく、反動も大きい。敵から力を奪うごとに強くなれるが、定期的に戦わなければ激しい飢餓感が襲ってくる。もし飢えが限界を超えると眼が赤く染まり、殺傷衝動を抑えきれない状態になってしまう。ここまで読んで、やっと作品名にベルセルク(狂戦士)と付けられた意味が理解できる仕組みだ。
最近ではチートスキルを持った主人公が無双するラノベ作品が乱発気味なためか、似たようなテーマの作品すべてを食わず嫌いする人も見かける。しかし本作は、チート級のスキルに多大なリスクを背負わせてバランスをとっている点、メインヒロインに存在感があって安直なハーレム路線になっていない点など、ほどよく硬派な仕上がりなのを個人的に高く評価したい。
飢餓のリスクを抱えつつ、フェイトは可憐な聖騎士・ロキシーのもとで働くようになり、さらに意思を持つ謎の魔剣「グリード」を手に入れるなど、どんどん新たな冒険へと踏み込んでいく。
全体的に話のテンポがよく、絵も洗練されていてサクサク読み進められるだろう。お手頃でユニークなファンタジー漫画を探している人は、ぜひ一度読んでみてほしい。
【作品情報】
・原作:一色一凛
・作画:滝乃大祐
・キャラクター原案:fame
・出版社:マイクロマガジン社
・刊行状況:2巻まで