24時間戦える、強くて優しいサイボーグおじさん奮闘記!『企業戦士YAMAZAKI』

時はバブル崩壊後の日本。おそるべき発想力とリサーチで、あらゆる企業のビジネスを100%成功させる最強の派遣社員・山崎宅郎がウワサになっていた。

無表情で淡々と業務をこなす彼の正体は、秘密裏にサイボーグへと改造された尾崎達郎という元商社マン。かつて仲間の裏切りに遭い、過労死するまで働かされてなお、愛する妻と子供に少しでもお金を残すため機械の体で甦った優しいパパだったのだ。そんな山崎は自分の過去など誰にも語らず、今日も苦境に陥った企業を訪れ、業績だけでなく社員たちの心まで立て直していく――!

働き方改革なんて言葉がニュースにしばしば出てくる現代。そんな今だからこそバブル直後のビジネス漫画を紹介したい。それが異色のヒーロー像を描ききり、いまだ根強いファンがいる『企業戦士YAMAZAKI』である。

世界観はほぼ現実と同じだが、唯一違うのは、主人公をはじめとしたサイボーグ企業戦士(ビジネスコマンドー)が人知れず生み出され、活躍している部分である。彼らは生身の人間を超えた仕事能力と戦闘力を誇るが、正統派ビジネスに徹する山崎と違って平気で産業スパイまがいの違法活動に手を染める者もいる。そうしたライバル企業戦士との肉弾バトルも、本作のユニークなところと言えるだろう。

ストーリーは基本的に1話完結。まず業績が落ちて社内ムードも荒んだ企業からの依頼で、山崎が派遣される。すぐさま山崎は画期的な新商品・新サービスを考案してプレゼンを通す。だがいざ新企画をスタートしようとした矢先にライバル企業戦士が横取りしようと襲撃してきて、山崎は損傷しながらも撃退する。その“困難があっても正しい道を進む精神”が依頼してきた企業の社員たちにも伝わり、大団円で任務完了……といった流れだ。

ちなみに山崎が作中で提案した新商品には「小型のデジタルカメラ」「新聞が読める携帯電子端末」など、後に現実社会で製品化されたものも少なくない。それを彼が膨大なデータとともにプレゼンするシーンはビジネスマンとして非常に勉強になる。

一方でライバル企業戦士とのバトルはギャグ要素が多め。敵は実在の芸能人をモデルにした風貌で、プラズマ砲やナパーム弾といった超近代兵器をボディに内蔵している。山崎はそれを「名刺スラッシュ」「ネクタイブレード」のようなネタ技(?)で倒してのけるのだ。

全体として水戸黄門的なパターンの決まった展開だが、それでもシリアス度が増してくる中盤から終盤のストーリーはぜひ読んでみてほしい。たくさんの企業と人を救い続ける中で、山崎(尾崎)の生身の脳は確実にダメージを蓄積させていく。その果てに待つ結末は、きっと涙なくして読めないはず。

くたびれた風貌の中年サラリーマンというジャンプ系列らしからぬ主人公像、アシスタントとして彼に同行する不良少女の精神的な成長、あざやかなビジネス手腕、こてこてのネタが詰まった肉弾バトル、「他人を活かすことで自分も活きることがビジネスの本道なり」など名言の数々、そして無表情の中に秘められた山崎の果てしない情熱と優しさ……文句なしに超オススメの一作と太鼓判を押したい。

【作品データ】
・作者:富沢順
・出版社:集英社
・刊行状況:全12巻