【あらすじ】
青葉中学校で一緒に柔道をやっていた、園田未知と滝川早苗。出場した最後の団体戦は二回戦敗退。結局、最後まで思うような結果を残せなかったことで、未知は柔道をやめようと思っていた。
しかし、中学最後の対戦相手で未知に勝った氷浦永遠は、楽しそうに柔道をする未知を見て「高校では、未知と一緒に柔道をしたい」という思いをいだき、2人の進学した青葉西高校を受験して同級生になる。
一方、未知と幼なじみの南雲安奈は、ずっと未知と一緒に部活をしたいと思い続けていた。未知は「高校では柔道はしない」と言っていたが、半ば強引に武道場へ連れていき、そこで未知と永遠、早苗、安奈が遭遇する。
入学後は、なかなか「一緒に柔道をしよう」という一言を伝えられながった永遠だったが、期せずして未知と乱取りをすることになり、見事に袖釣込腰で投げられてしまう。その時、楽しそうに柔道をする未知を見て、早苗も未知に「もう一度柔道しない?」と誘い、再び柔道部に入部することになり……。
【みどころ】
老若男女問わず、中学・高校時代に何らかの部活に所属していた人は多いことでしょう。この「部活」というのは、日本独自のもので、同世代の生徒が同じ目的に向かってひとつのものに取り組む機会を与えてくれます。
嬉しいことや楽しいことはみんなで分かち合う、辛いことや悔しいことはみんなで分け合ってともに進んでいくこと、これが部活動の良さといえます。これも、人数が多くなればなるほど、その喜びもより大きくなっていくものですね。
青葉西高校で柔道を続ける決心をした未知と早苗に、中学時代に全国大会出場経験のある永遠という頼もしい仲間を加えて、どう成長していくか。未知とは小学校からの幼なじみなものの、なかなか未知と一緒に部活をする機会がない安奈は今後どのような選択をして、柔道部3人娘との関係はどのようになっていくのか。
そして、高校では柔道から離れて、恋愛一直線の生活を送ろうと思っていた未知に、彼氏はできるのか?そんな今どき女子高生のゆるくてあつい部活青春ダイアリーを、『ウチコミ!!』でおなじみの村岡ユウ先生が描きます。
さて、柔道をテーマにしたマンガといえば、『柔道部物語』や『JJM 女子柔道部物語』(講談社・いずれも小林まこと)、『帯をギュッとね!』(小学館・河合克敏)、本作の名前の由来ともなっている『いっぽん!』(秋田書店・佐藤タカヒロ)などがあります。
小林まこと先生の『柔道部物語』や『JJM 女子柔道部物語』は、高校から柔道をはじめた高校生が主人公で、どんどん柔道にのめり込んでいって強くなるというストーリーとなっており、いずれも柔道の描写が中心です。
もちろん学校生活も出てくるもののあくまでも別添程度で、柔道の稽古と試合の描写が全体の8割ほどを占めています。
一方、河合克敏先生の『帯をギュッとね!』は、中学3年時の昇段審査で出会った5人が同じ高校に入学して柔道部を作り、同じ地区のライバル校と切磋琢磨しながら強くなっていく過程を描いた作品となっています。
柔道の稽古や試合に関する描写があるものの、普段の学校生活に関する部分の描写もあり、当時の高校生が考えていたであろうことが描かれていました。
佐藤タカヒロ先生の『いっぽん!』は、小学生の時に柔道と出会い中学までは一人で活動していた少年が、高校に入り新しい仲間を得て、心技体ともに成長していく過程を描いた作品です。こちらも学校生活は描かれているものの、やはり柔道の稽古・試合の描写が中心となっています。
『もういっぽん!』は柔道を題材にしたマンガなので、当然稽古や試合の描写もあるものの、どちらかというと学校生活の描写と剣道部との微妙な距離感を中心として描かれています。また、先に紹介した『いっぽん!』のように、新しい仲間を得てより柔道を好きになり、より強くなっていくプロセスが描かれています。
ストーリーラインを追いかけていくと、『帯をギュッとね!』や『いっぽん!』が好きな人であれば、話にのめり込んでいける作品なのではないでしょうか。
絵柄に関しては、主人公をはじめとしたすべてのキャラクターがキャッチーに描かれているだけでなく、試合や練習の描写もよく取材を重ねていることがわかるような絵柄で描かれており、多くの方に好感を持っていただけるのではないかと思います。
実際、ツイートを見ていても絵柄に大きな称賛が集まっています。女子柔道をメインに扱っている作品があまり多くなかったという理由もあるのかとは思いますが、連載当初から応援するツイートが多いことからもその期待度の高さがわかることでしょう。
「もういっぽん!」1巻
女子柔道部のガールズ部活もの。柔道やってたから試合展開がリアルで臨場感に感動した。あと、剣道部との距離感がよくわかる。ほんとあんな感じ。
キャッチーな絵柄で読みやすいので、部活もの読みたい全ての人にオススメしたい。 pic.twitter.com/hVJTEUSe8Q— ひいで (@hiidejp) March 10, 2019
5月8日には、いよいよ待望の第2巻が発売されます。第2巻からは、いよいよ夏のメインイベントでもあるインターハイ、その予選編がはじまります。ますます柔道にのめり込んでいく3人の少女たちは、今後どのように成長していくのか、新しいライバルはどこから出てくるのか?
今後の展開が楽しみです。
【作品データ】
・作者:村岡ユウ
・出版社:秋田書店
・刊行状況:1巻まで