高校二年生の上條美和と中野まゆみは、結構いいところのお嬢様。しかし「D組」という、一番レベルの低いクラスにいて、その中でも一番おバカなことをしている変わり者同士だ。家柄が良いというだけで将来まで決められている二人は、わずかな青春を楽しむために全力を尽くすが──?!
ある日ファーストフード店で見かけた男子三人組に興味を持った美和とまゆみは、早速彼らを調査すべく行動を開始する。ギター教室に通っていたり、バンドが好きだったりというささやかなことを知るだけでも、十分に楽しく過ごせた。しかし突然美和がバイトをすると宣言。目を付けた男子と接近したいからだと言うが……。
一方まゆみは、実は中学時はトップの成績を誇る才女だった。何故高校生になってからD組に甘んじているのかと疑問に思っていた美和だったが、そこには深い理由があったらしい。しかし自分の恋愛を成就させることに夢中だったせいで、まゆみの変化を見落としてしまう。シリアスとギャグが入り混じり、読者もまんまと流されるかも知れない。
「青春」と言えば高校時代と表されるほど、その時期は貴重だ。過ぎてから懐かしく振り返る思い出もあれば、二度と思い出したくないこともあるだろう。しかし、たまたま良い家柄に生まれてしまった二人は、その「青春」を自由に楽しむことすら制限されそうになる。それに反抗することさえ嬉しいほどに、彼女たちにとってはひとつひとつが貴重な時間だった。
恋愛をしたり、バイトをしたり、ちょっと悪い遊びに興味を持ったり……。大人から見ればくだらないことでも、青春のわずかな時期にしかできない大切な経験が、本当はたくさんある。そこで失敗したり哀しい思いをして、人間は成長していくのだ。ルールだの年齢だので縛られると、なおさらそこから脱出したくなるのは、成人しても変わらないかも知れない。
失恋もすれば、自分の気持ちを見失いそうになることもある。他人に優しくできる人は、そんな辛さを知っているからなのではないだろうか。友人に助けられたり、教師にかばわれたりしながら、大きく羽ばたこうとする二人の少女に、多くの読者が自分を重ねられるはずだ。そして最後には、きっと元気をもらえるような作品になっている。素晴らしきかな、青春!
【作品データ】
・作者:藤臣柊子
・出版社:ビーグリー
・刊行状況:全1巻