ルールを破ったらどうなる…?“してはいけない”を集めた戦慄ホラー『禁忌』

「◯◯してはいけない」と言われても、ついやってしまうのが人間の心理。だが昨今ニュースになっている“バイトテロ”騒動のように、軽率な判断が人生を破滅させることもある。今回は、そんなエピソードを集めたオムニバスホラー『禁忌 絶対にやってはいけない13のこと』をご紹介したい。

本作は13の短編から構成され、それぞれに関連性はない。ただ、主人公が小学生~大学生くらいの若者という点、各話サブタイトルに「してはいけない」が付いている点などの共通部分がある。

たとえば、ある場所で振り返ったせいで怪物のような女に追い回される「振り返ってはいけない」、同級生の気を引くために嘘をつき続けていき悲劇が拡大する「嘘をついてはいけない」、鏡に映る自分自身へ話しかけるうちに精神が壊れていく「話しかけてはいけない」など……時には理不尽な、時には因果応報な結末が主人公を待っている。

コミックス1冊分のページ数に13話も詰め込んだわりに、どれも丁寧なストーリーとして完成している構成力が見どころ。また、じわじわ恐怖心を煽る作画・演出も巧みで「たぶんページをめくったら大画面で怖い顔があるな」と予想できていても、ビクッと驚くことが避けられない。

個人的に一番おすすめなのは12話目「連れて行ってはいけない」。親友である高校3年生の男子2人が卒業旅行として雪山に登るが悪天候で遭難。ついに片方が死んでしまってから、本当の恐怖が幕を開ける──。全16ページとは思えないほど密度が濃く、何度読み返しても新しい発見がある傑作エピソードだと言える。

各話とも徹底して救いようのないラスト、ショッキングな描写が多いことから、ホラー初心者には厳しいかもしれないが、ある程度の耐性がある人なら読んでおいて絶対に損はないだろう。

【作品データ】
・原作:矢樹純 作画:加藤山羊
・出版社:ビーグリー
・刊行状況:全1巻