人間でも妖でもいい!『霊感少年の事件簿~半妖 亜蘭編~』は大切な姉のためなら!

目が覚めると自室のベッドにいる亜蘭。最近よく記憶が飛んでしまうことがあったが、二人の姉と違って霊感などまったく持っていないはずだった。しかし、それまではただの奇行だと思っていた、洗濯叩きであちこち叩きまわるという下の姉・桜花の行為が理解できてしまった。彼女はどうやら「異形のモノ」を追っていたことが視えるようになっていたのだ──。

自宅で占い師として仕事をしている長女の葉月だが、実際に事前に占っているのは妹の桜花。亜蘭はある時、偶然足を踏み入れた見知らぬ屋敷の庭で「異界の番人」をしているという老婆と、額に第三の目を持つ男・由良に出会う。亜蘭の覚醒は、どうやら彼が引き金になったようだった。

自身の変化を打ち明け、ようやく葉月から教えられたのは、彼らの一族が代々占いや予言によって生計を立てていたということ。両親はそんな一族を嫌い、隠れ里を去ったが、あまりにも秀でた能力を持っていた桜花は、次期の「妖使い」にさせたい一族から今も追われる身なのだという。

霊が視えるようになったばかりか、自分が桜花の力の巻き添えになって一度死に、彼女自身によって何とか復活させられたと知る亜蘭。人のいい彼は半妖となりながらも、悪霊に憑かれた人間や妖までをも救うが……?異界と現世のバランスが取れていれば構わないという由良に頼りつつ、さまざまな事件や謎に巻き込まれていく。

大陸での抗争に敗れて日本に渡った挙げ句、亜蘭の一族に滅ぼされた天狗の最後の生き残りの存在が明らかになり、桜花がとうとう一族の残党にさらわれてしまう。ぼやけた点が少しずつ繋がっていき、カタチが見えていく様はなかなかに引き込まれる。立場の違う二人の姉の関係にも巧妙な伏線があり、亜蘭に関わる人々の悲劇を描きつつ、彼の成長が姉たちを救いに導くストーリー展開には読者も巻き込まれるだろう。

家族愛や因縁、逃れられない運命など、絡み合う感情が進めていく物語は、亜蘭に何をもたらすのか?血縁者は裏切り、他人は情を持つという、人間の不思議が浮き出るような描写は、亜蘭が半妖だからこそ見せられるのではないだろうか。大切なものを守るためには、失うものもある。都合良く美味しいところだけを持っていけないが、一番自分の納得できるカタチを探す亜蘭の姿には心を揺さぶられるはずだ。

なお、この一族にまつわる他作もあるので、引き込まれる設定に興味を抱いた方はぜひさらに読んでみて欲しい。怪奇ミステリーでありながら、穏やかなタッチの絵と個性豊かなキャラクターには、奇妙な人間臭さが見え隠れして、好奇心が押さえきれなくなるに違いない。

【作品データ】
・作者:はざまもり
・出版社:青泉社
・刊行状況:全1巻