年の差?親戚?恋する相手は『フラワーガーデン』じゃ関係ない!

酔うと何かしらモノを拾って帰る癖のある蒼子(そうこ)。これまでは店の看板や粗大ゴミ、よその犬などだったが、ある朝目が覚めると自分は裸で、隣には同じく裸の少年が……?!まさか今度「拾って」しまったのは、とうとう人間?!しかもお互いに裸でベッド上ということは……名乗った覚えはないのに名前も知られているし、ひとまず会社に行ったけれど、社内恋愛中の上司を招いて帰宅すると、まだそこに少年がいて──?

上司で恋人の松田はとてもいい人。優しくて穏やかで、結婚まで視野に入れてくれている。片や蒼子は見知らぬ少年と……と思いきや、どうやら彼は本当に遠い親戚らしい。しかし朝の状況からして、ヤバいことに変わりはなく、むしろ親戚なら一層まずのでは?と落ち込んでしまう。少年・薫は愛らしい顔で小悪魔的な性格。イジメが原因で蒼子のところに転がり込んできたらしいが、蒼子にはそんなヤワなタマには見えない。

松田とは良好な関係が続いていて、両親に会って欲しいとまで言われる蒼子。薫がいても構わないと言ってくれるものの、蒼子自身はとてもそんなことはできそうにない。いろいろと考えているうちに薫がかつてホモと関わっていたと知り、誤解したままの蒼子はエイズ検査を勧める。万一陽性だとしたら自分も……ならば松田と結婚は……と悩む蒼子。そんな中、松田は会社の部長の誤解から、大手取引先の令嬢とお見合いするハメに?!

基本的にはドタバタなラブコメだが、要所要所でシリアスな場面も挟まれるため、笑ったりハッとしたりの連続が癖になる。まさかのラストには驚かされるが、ハッピーエンドならいいかな、と思えるほっこり加減もいい。同時収録の短編『夢で逢いましょう』と『Black Chocolate』は、シリアスに傾いた作品だが、全体的に儚く憂いのある仕上がりになっている。

「好き」って何かな、「タイミング」って大切だな、「ご縁」ってあるんだな──そんなふうに考えさせられる3つの作品。『フラワーガーデン』というタイトルは、蒼子の太ももにある痣から得たのだろうか。『夢で逢いましょう』も園芸をモチーフにしているし、『Black Chocolate』でも恋人が花を欲しがる描写があるので、そこには恋愛の華やかさや儚さなども込められているのかも知れない。「たかが少女漫画」だけではないものが、ここにはある。

【作品データ】
・作者:遠野一実
・出版社:オフィス漫
・刊行状況:全1巻