おいしそうに何かを食べる美少女(美女)は上質なエンタメになる!――そんな発見から『幸腹グラフィティ』『ラーメン大好き小泉さん』『ワカコ酒』など、近年は女性キャラを前面に押し出したグルメ漫画が増えてきた。今回はそのジャンルから、”お嬢様と肉”のマッチングが個性的で楽しい『肉食女子!!』を紹介したい。
主人公の白波瀬 しずるは調味料メーカーに勤めて2年目の23歳。才色兼備で仕事をてきぱきこなし、名家の育ちにふさわしい優雅なふるまいも備えたパーフェクトお嬢様である。だが、周囲の誰にも明かしていない彼女の本性は、まるでケダモノのような激しい”肉食への渇望”。今日もまた社内の付き合いを断り、ここぞという店で本能が命じるまま大ボリュームの肉に食らいつくのだった……!
このように基本的な部分だけ見れば、アニメ・ドラマ化された人気作『ラーメン大好き小泉さん』の肉バージョンといったところ。
ただ、お嬢様言葉を使う美女が目の色を変え、男も顔負けの大口で肉汁したたるステーキにかぶりつくシーンなど、同種の作品よりワイルドさが強調された仕上がりになっている。この手の描写はしばしば「食べ方が下品」「女の子らしさを感じない」など批判的レビューの対象になったりもするが、そんなの知ったことか!と言わんばかりの食べっぷりは一見の価値アリだ。
ワイルドさに加え、ストーリー要素が強めなのも本作の特徴。しずるが並外れた肉好きになった背景は意外とシビアで、生まれた育った環境が関係している。実家は厳格なベジタリアン主義のため、生き物の命を奪わない植物性の食材しか使わなかった。それを当然と思って育ったしずるだが、避暑地で迷子になった15年前の夏、迷い込んだ山小屋で謎の老人から”あの肉”を食べさせてもらい、肉の美味しさに覚醒した……という過去が語られている。
”あの肉”の正体を突き止めたいという探究心、自制できない肉食への衝動、隠していた本性を会社の後輩に目撃されたことによる動揺などが描かれ、単なる美少女(美女)グルメ漫画にとどまらない奥深さが楽しめる。
もちろんメインコンテンツである肉料理の描写も高クオリティで、第1巻だけでも大型ステーキ、とんかつ、ハンバーグ、さらにケバブや肉寿司まで幅広く登場。本編の食事シーンと、エピソードの合間に挿入された肉コラムが読者の食欲をダイレクトに刺激してくる。
女性キャラのダイナミックな食事シーンに抵抗がない、むしろ大歓迎という人には、文句なしにオススメしたい作品だ。
【作品データ】
原作:青木健生 作画:城谷間間
出版社:マイクロマガジン社
刊行状況:全2巻(完結)