11本の贅沢なホラー短編集『カマキリ女』は恐怖の連鎖!

ホラー漫画を描こうと思うと、冗長になるほどに恐怖心が萎えていくため、短編であることが多い。本作『カマキリ女』も同様だが、とは言え11本もの短編が収められているというのはなかなかに贅沢なものだ。表題作『カマキリ女』は、初めはいじめられている女生徒を救うかのように見えるが、読み進めていくとそういうわけではないことがわかる。ホラーの典型的な形式をなぞりつつ、展開がわかっているのに怖いという技巧に驚かされながら読める作品だ。

タイトルを列挙すると、『カマキリ女』『コアラが見ている』『善田家の地獄』『水が誘う』『地獄のガチャガチャ』『蛇童子』『地獄家族』『悪夢の教室』『コロシアム』『霊人形』『妖虫』と、おおかたの想像がつきそうなものから、意味がわからなくて非常に興味を引くものまでさまざまだ。が、著者の好みなのか癖なのか、主人公の少女はほとんどが黒髪で前が重めのボブカットというスタイルが多い。稀にロングヘアの少女もいるがやはり黒髪で、いじめられっ子や気の弱い子など、おとなしい印象だ。もちろん、全員別人である。

『カマキリ女』は、主人公の弟の小学校でも話題になるような都市伝説で、長い髪に血で染まったような赤いコートを着ているらしい。そして狙った人間は鋭い鎌で首を切られて、人形に改造されてしまうという。いかにも小学生が好みそうな噂だと思うが、実際に主人公がその女を見て、しかも自分の学校の臨時教師として現れるのだから、自然とその正体に行き着いてしまうのだろう。

気になるタイトルである『地獄のガチャガチャ』は、ガチャガチャに夢中になるような子供が主人公で、こちらもいわば都市伝説の具現化だ。町の中のどこか目立たないところに突然現れて、中には願い事を叶えてくれるアイテムが入っているという。ちょうど両親が喧嘩中で居心地の悪かった主人公は、同級生の男子生徒二人と一緒にそれを発見し、両親が仲直りすることを願う。男子生徒二人の願いは残酷な形で叶えられたため、主人公は恐れてしまうが、やはりソレはやってきて……というもの。

『蛇童子』や『地獄家族』などは、勧善懲悪とまではいかないが、自業自得な部分もあるので、冒頭から中盤にかけてはホラーの恐怖があるが、最後は「めでたしめでたし」というまとめになっている。ラストに置かれた『妖虫』は、ホラーとはややテイストが異なる部分もあるが、最終的にはハッピーエンドを匂わせる形で終わるため、読後感は良い。

まったく違うホラーが11本もまとめられているので、それぞれの内容で印象も変わるだろう。「怖いのはちょっと……」という人も、意外に読めそうな雰囲気もあるが、しかしそこはやはりホラー漫画なので、根底には言い知れない不気味さが流れているのを忘れてはならない。ホラー慣れしている人でも、心理的に「ゾワッ」とするはずだ。

【作品データ】
・作者:千之ナイフ
・出版社:ぶんか社
・刊行状況:全1巻