料理人は歴史を変えられるか?『信長のシェフ』

漫画や小説に限らず、タイムスリップを取り扱う作品における焦点の1つに、「どれだけ歴史を変えられるか」がある。そして日本史における大きな話題の1つに、「織田信長が本能寺の変で死ななかったら、その後の日本の歴史はどうなったか」がある。この2つが楽しめそうな漫画が、芳文社「週刊まんがTIMES」にて好評連載中の『信長のシェフ』(梶川卓郎)だ。

現代の西洋料理人であるケン(葛城賢一郎)が、戦国時代にタイムスリップし、織田信長に料理人として使える展開は、まさにタイトルそのまま。2013年と2014年にテレビ朝日系列にて、Kis-My-Ft2の玉森裕太さんがケン役、及川光博さんが織田信長役でドラマ化された。その辺りは、2013年の記事「ドラマも好評放送中!『信長のシェフ』原作レビュー」をどうぞ。

タイムスリップした当初のケンは、信長の意向に従いつつ料理や菓子を提供しながらも、歴史の流れを妨げようとはしなかった。しかし、信長の強烈な意思を身近で度々感じたことで、歴史を変えたい、つまり信長に生き延びて欲しいと考えるようになってきた。

現代に生きる私達であれば、「本能寺の変を起こす張本人である明智光秀さえいなければ良いんじゃないの?」と考えるのではないだろうか。ただし、本作における明智光秀は温厚かつ有能な人物であり、織田軍に欠かすことのできない武将の1人だ。そんな彼を料理人でしかないケンが排除するのは、非情に困難と言っても良いだろう。万一、ケンの進言を受けた信長が光秀を排除しようものなら、別の意味で織田家中に悪い影響が残りそうだ。こうした状況はケンも十分に理解しており、何とか穏便な方法を探し求めている。

その方法は何か?実は本作では、既に歴史と全く異なる展開が1つ描かれており、歴史が変わった原因について、ケンも1つの推測をしている。その歴史と異なる展開や、ケンの推測については、ぜひ本作を読んで欲しいところ。その推測が当たっているか、それとも的外れなのか。仮に当たっていたとして、それで歴史がどう変わるのか。今後の変化に大きく関わる部分だけに、見逃せない展開が続きそうだ。

本作の連載開始時には、原作者として西村ミツルさんの名前があった。西村さんは、ベトナムの日本国大使館に勤める公邸料理人が主人公となる漫画『大使閣下の料理人』や、首相官邸で料理人を務める主人公を描いた漫画『グ・ラ・メ!-大宰相の料理人-』などの原作者としても有名。けれども、本作における原作者表記は10巻まで、料理監修の表記も12巻までで、その後は梶川卓郎さんのみとなっている。梶川さんがどう展開を練り込んでいくのか楽しみだ。

【作品データ】
作者:梶川卓郎
出版社:芳文社
刊行状況:1~22巻(以下続刊)