“可愛い女の子”の上杉謙信が大活躍『軍神ちゃんとよばないで』

数多くの戦国大名の中でも、屈指の人気を持つうちの1人であると言える上杉謙信。そんな上杉謙信には、実は女性だったのではないかとする説が存在します。生涯結婚しなかったこと、毎月定期的に体調を崩していたような記録があること、当時日本にいた外国人の記録に女性と書かれていたことなどが根拠となっているそうです。

もちろんそのまま肯定するには弱すぎる根拠ですし、「そんなバカな!」と思う人が大半でしょうけれども、なにぶん500年も前のことですし、100%否定できるものでもありません。そうした謙信女性説を元に描かれた4コマ漫画が、芳文社「まんがタイム」で連載中の『軍神ちゃんとよばないで』(柳原満月)です。

物語の当初、主人公の虎千代(後の謙信)は、可愛らしい女の子であるばかりでなく、お酒と昼寝が大好きな怠け者として描かれています。しかし運の良さは天下一品で、虎千代が何もしないまま、もしくは周囲に流されるままに動いたことで、次々に事態が好転して、ついには「軍神」とまで呼ばれるようになってしまいます。

その後、兄から家督を譲られて当主になるのですが、ぐうたらな性格は変わらないままです。しかし、元からの家臣である小島弥太郎や金津新兵衛のみならず、後に加わった宇佐美定満、柿崎景家、直江実綱らの優秀な家臣達に支えられ、また、兄である晴景の死をきっかけに、ちょっと……ほんのちょっとだけですが、変わったようなところを見せて、国主としての務めに向き合うようになっていきます。

史実では1530年に生まれたことになっていますので、この頃にはもう20代も後半になっているはずなのですけれども、漫画の中では相変わらず幼い女の子のような外見のままです。もちろん、漫画ならではの表現でもあるのでしょうが、さらに歳を重ねて行くとどうなるのかなと、少し心配になってきます。

本作は、芳文社の4コマ漫画誌「まんがタイムファミリー」にて、2013年のゲスト掲載を経て本格連載となりましたが、同誌が2018年に休刊となったことで、同じ芳文社の4コマ姉妹誌である「まんがタイム」に移籍し、現在も好評連載中です。

さて、作中では宿敵である武田信玄と川中島での戦を重ねる中で、当の信玄が僧侶の格好をしていたこともあって、信玄本人と知らないままに何度も顔を合わせていました。しかしながら、最近の連載では信玄を迎えにきた部下と出会ったことで、自分が知らずに会っていた僧侶が敵対している信玄であることに、とうとう気付いてしまいます。

一方の信玄ですが、謙信がパッと見にお姫様のような格好をしていたため、それが目の前の戦で戦っている大将である上杉謙信とは気付いていません。さて、気づいてしまった謙信がどんな行動をとるのか。武田信玄を主人公として始まった、同作者によるスピンオフ4コマ連載『ここから風林火山』とともに、引き続き楽しみにしたいところです。

【作品データ】
作者:柳原満月
出版社:芳文社
刊行状況:既刊1〜4巻、第5巻10月5日発売予定