20年ほど前から超能力者が現れ始めて浸透し、「現代の魔法使い」と呼ばれて一般の警察では手に負えないような、超能力者が関わる事件の解決などを行っている彼ら。超能力に目覚めるリミットとされる15歳を過ぎてしまい、16歳の誕生日を迎えてしまった主人公・功太は、先に超能力に目覚めて空中に作られた「魔法王都(ウィザーダム)」に行っていた姉から、別れの電話を受ける。それまでずっと超能力者になれると信じていた功太は――?!
高校生になってもまだ「すごい超能力者になる!」と言い続けている功太を、友人は「厨二病」と言う。子どもの頃から大好きな姉の助言によって、勉強も運動もできるハイスペック高校生にはなれたものの、心の中ではまだ超能力者への憧れが消えない。友人には、その頭脳を活かせば何にでもなれるのにと残念がられるほどに優秀なのだが……。
しかし誕生日の朝に、突如自室に死体があるという状況に陥ってしまい、功太が犯人にされてしまいそうになる。そこへ本物の超能力者が現れ、この事件は超能力犯罪(サイクライム)だということになった。「このまま平凡な人生を送るのは嫌だ」と考えていた功太は、とっさに自分も超能力者だと嘘をつく。さすが厨二病というべきか、“脳を活性化させて推理力を得る”という超能力「名探偵能力(ハイ・ロジック)」といういかにもな命名までして、その事件を偶然の推理で見事に解決してしまう。
そこで功太は、16歳で超能力に目覚め、しかもこれまで確認されていない能力を持つ者であるということになり、思わぬ形で「魔法王都」入りすることになった。超能力を持たない功太が魔法使いとして認められてしまったため、凡人であることを隠しながらも事件をきっちり解決し、功績を挙げなければならない。周囲にいるのは当然みんな超能力者であるため、功太はあらゆる相手に興味津々で友達になろうとするなど、異常なまでの「超能力者オタク」ぶりを発揮するのも面白い。
『名探偵コナン』や『金田一少年の事件簿』などのキメ台詞をパクるなど、メタ的要素を含む発言も多く、物語が進むにつれラブコメ色も増していく。超能力者がたくさん登場するが、あくまで主人公は凡人。しかし事件はしっかりとしたミステリで、功太の推理力も冴えている。言うなれば「ファンタジック・ミステリ」だが、実はその裏でもっと大きな事件が動いていたりもするので、単純なコメディで終わらないのも興味深い。
個性の強いキャラクター、テンポの良い進み具合、人間関係の交わり方など、シリアスパートもあるので、時に名言も生まれる。気分がいい時はもちろん、少し滅入っている時にでも読んでみると、意外にそこに求めていた答えが見つかるかも知れない。
【作品データ】
・作者:雨墨篤
・出版社:A-WAGON
・刊行状況:第1〜52話
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