『ドラゴンボール』などに代表される格闘バトル漫画は、古くから絶大な人気を誇るジャンルだ。それらは「誰が最強か?」「どの格闘技が最強か?」がテーマだが、ついに「どの武器が最強か?」を問う斬新な作品『MASTERグレープ』が登場した。
タイトルの意味は、MASTER=達人、グレープ=葡萄=武道という連想で、“武道の達人”といったところか。
主人公の佐倉は、勉強とゲームが取り柄の中学生。ある日、武器をもった不良集団に街で絡まれ、「杖術」と「剣術」を使う同年代の2人に助けられる。その強さと正義感に憧れた佐倉は彼らがともに武道の名門校と関係していることを知り、同じ学校を受験した。そして武道部でめでたく2人と再会し、彼自身も「薙刀(なぎなた)」修業を通じて“武器術”の奥深さに目覚めていく。
まず特筆すべきは、武器の多彩さだろう。剣、槍などメジャー路線からトンファー、長巻などマニアックなものまで登場。これらが試合ではソフト素材で殺傷能力を弱められ、選手たちが本気で打ち合う。実在する武道でいえばスポーツチャンバラの試合に最も近い。
『るろうに剣心』をはじめ少年漫画では刀剣が圧倒的に優遇される傾向にあるが、マイナーな武器種にスポットを当てることで、そんな風潮に一石を投じたのは大きい。
そして特徴の2つめは、作中で猛者と呼ばれるキャラの大半が「弱者」なはずの小柄な少年だったり、か細い女性だったりするところ。武器の特性を理解して使いこなせば体格差のハンデを帳消しにできる、という作品テーマをよく表現している。
剣道を扱った有名作『BAMBOO BLADE』と同じ原作者だけあって、安心して読める日常シーン&鬼気迫るアクションシーンの展開は見事。その原作を引き立てる画力も安定しており、かなりの良作になりそうだ。いろいろな武器が入り乱れる作風はアニメにも向いているので、今後のメディアミックスに期待したい。
【作品データ】
原作:土塚理弘 作画:高橋アキラ
出版社:小学館
刊行状況:4巻まで(続刊)