本格的ハンバーガーを題材にした人情グルメ漫画『本日のバーガー』

起源を1970年代の『包丁人味平』とし、一つの完成形を1980年代の『美味しんぼ』とするであろう、日本のグルメ漫画。最近では弁当あり、ジビエ料理あり、迷宮モンスター料理ありとバリエーションが広がっている中で、久しぶりに原点回帰と言えそうな“古くて新しい”正統派グルメ漫画『本日のバーガー』が登場した。今回はそれを紹介したい。

作品の舞台は独立系ハンバーガーショップ「UNLIMITED SOULS」。店長を務める青年・神宮寺慧が主人公。大手商社のスゴ腕バイヤーとして世界を駆け回った彼は、ハンバーガーの魅力を日本に広めるため、惜しまれながらも脱サラして自分の店を開いた。

各国のさまざまなハンバーガーを熟知し、その知識から作られる味は最高峰のプロも舌を巻くほど。それでいて奢るところがなく、神宮寺はお客さんの心に寄り添いながら「本日のバーガー」と称するスペシャルメニューを提供し続ける。

すでにカレーやラーメンを主軸にしたグルメ漫画は存在していたが、ハンバーガーメインはおそらく初めての試みだろう。

ファーストフードチェーンの画一的な味に慣れた人は「ハンバーガーなんて大した種類もないのにネタが尽きないの?」と心配するかもしれないが、そこは(おそらく)原作者の異常ともいえる知識量がカバーしてくれている。

たとえば故郷キューバの味を懐かしむ外人野球選手には現地仕立ての「アンブルゲサ」を、玉ねぎの魅力を引き出してくれと言われればデンマークの「ボフサンドイッチ」を――どこにそれだけのバリエーションがあったのかと驚くような多種多様のハンバーガーが登場し、まったく読者を飽きさせることがない。

全体としては『美味しんぼ』のように食べ物を活かすことで人々の悩みを解消するタイプのクラシカルな作風だが、主人公が温和な性格なので料理バトルは控えめ。ヤング誌で活躍してきた作者だけあってキャラクター(特に女性)全般がとても美しく、あくまで人物・人情を中心に据えた作品に仕立てられている。

万人におすすめできるが、とりわけハンバーガーに興味がある人にはマストと言いたい。近年は海外ハンバーガーチェーンの日本上陸も活発化してきたところなので、その意外な歴史と奥深さに、まずは漫画で触れておくのも良いだろう。

【作品データ】
原作:花形怜 作画:才谷ウメタロウ
出版社:芳文社
刊行状況:8巻まで(続刊)