ラノベ原作の癒し系グルメ漫画『異世界居酒屋「のぶ」』

【あらすじ】
舞台は石畳が並ぶ西欧風の古都。そこには知る人ぞ知る、隠れた料理の名店「のぶ」があった。異民族のものと思われる飲食物は「トリアエズナマ」「オトーシ」「カラアゲ」など独特な響きを持ち、ほかでは味わえないような極上の美味ばかり。今日も衛兵や聖職者たちは仕事帰りに店を訪れ、「タイショー」が作る料理の数々を堪能するのだった……。

【みどころ】
ウェブ小説からスタートして人気を博し、書籍として刊行、さらにコミカライズを経て、2018年春からはTVアニメも放映されている良作を紹介したい。

ざっくり言えば大ヒットしたお風呂漫画『テルマエ・ロマエ』の、飲食版といった味わいの作品だ。

居酒屋「のぶ」はなぜか現代日本と、ヨーロッパ風の古都の両方に時空が繋がっている。連載初期の従業員は、料理人も兼ねる店長(タイショー=大将)と、愛嬌ある看板娘・しのぶ。旬の材料を日本側で仕入れて店内で調理し、古都の人たちに食べてもらう営業方式だ。

一番のおもしろさは、文化・価値観の違いが存分に楽しめるところではないだろうか。作中に登場するのは、生ビールや唐揚げ、湯豆腐といった私たち日本人にはなじみ深い料理ばかり。それが異世界の人々にとっては魔法のような食べ物になり、読んでいて恥ずかしくなるほどオーバーリアクションを見せてくれる。また、ありふれた透明なガラス細工の食器、軽くひねればきれいな水が出てくる蛇口ですら驚嘆の対象となっていて、そこかしこに「驚き」が描写されている。

もちろんこれだけだと単調な一発ネタになりかねないが、ちゃんと各エピソードには工夫が施してある。「イカが苦手」という理由で結婚に踏み切れない男をイカ料理に目覚めさせる話、わがまま放題の貴族を料理で感服させる話など、なにかしらテーマが設けられていることが多く、そこに日本の居酒屋メニューが脇役的に絡んでくる。異世界+グルメ+人情話という多層的なおもしろさが魅力と言って良いだろう。

すでにラノベ業界では「異世界モノ」があふれすぎて敬遠している人が多いかもしれないが、本作はオリジナリティが高く、描写も丁寧なので万人にオススメできる。アニメ、漫画、ラノベと主要メディアをほぼ網羅しているので、とっつきやすいと思う媒体から入ってみていただきたい。

【作品データ】 ※漫画版
・原作:蝉川夏哉 キャラ原案:転 作画:ヴァージニア二等兵
・出版社:KADOKAWA
・刊行状況:6巻まで(続刊)