メディアミックスも好調!『恋は雨上がりのように』原作最終巻がリリースされる

少女が恋した相手は、28歳も年の離れた冴えないバツイチ男だった――

年の差ラブストーリーを叙情たっぷりに描き、小学館漫画賞獲得、さらにアニメ化、実写映画化と知名度を高めている『恋は雨上がりのように』。その原作コミックス最終巻がこのほど発売され、さっそく大手ネットショップのAmazonでは青年コミック部門でベストセラー第1位(Kindle版)を獲得している。

2015年時点のレビューに続き、今回はネタバレを極力抑えつつ、どのように作品が展開していったかを紹介したい。

物語は女子高生・あきら(17歳)と、ファミレスの雇われ店長・近藤(45歳)の視点が入れ替わりながら進行する。

あきらは将来有望な陸上選手だったが、ケガが原因で大好きな「走ること」を断念。近藤は「小説を書くこと」が夢だったが、大成しないまま45歳になって日々の仕事に追われている。そんな“夢”を見られなくなった2人がファミレスで出会い、距離を縮めていく過程が描かれていった。

年の差恋愛のストーリーといえばどうしてもドロドロした肉欲的な話を想像しがちだが、本作は(一部妄想シーンはあるものの)叙情的な作風に最後までこだわり、互いの心の動きが丁寧に語り続けられた。

また、初期の展開から読者が想像していた「ラブストーリーが主体」というテーマそのものに変化が見られたのは、予想外というか嬉しい誤算だったかもしれない。

かなり早い段階で想いを告白したあきらに対し、近藤は驚きつつ、自分自身も彼女に惹かれているのを徐々に認めていく。だが、愛情イコール恋人にならないところが本作の評価を高めている部分。ひたすらストレートに愛情をぶつけてくるあきらに対し、近藤はためらうシーンが何度も描かれる。

未成年に手を出すのはいけないという法的・道徳的な問題ではなく、「自分が彼女と歩いていくには年を取りすぎた」とでも言うか、感性のレベルで隔たりを感じているのだ。人が三十路、四十路になると嫌でも感じる変化を、「一途に恋してくれる10代の少女」という半ばファンタジーめいた要素を強調することで、この作品はガツンと読者に突きつけてくる。

ストーリーが大きく動くシーンでは必ず雨が降っている演出も本作の特徴だが、最終話では雨がすっかり上がっている。その時、2人はどこにたどり着いているのか……結末はネタバレのため伏せるが、ラストまで読むと「ああ、ラブストーリーではなく“無くしていたものを取り戻す物語“だったんだ」と気付かされる人も多いだろう。

初期から重版がかかるほど話題作ではあったがアニメ化で人気に加速がつき、すでにコミックス発行は累計150万部を超えて200万部に迫るほど売れている。単なるラブコメでは終わらない深み、余韻がある作品なので、気になる人はメディアミックスの波に乗って原作もチェックしてみていただきたい。

【作品データ】
・作者:眉月じゅん
・出版社:小学館
・刊行状況:全10巻(完結)