格闘家たちの究極バトルがますますヒートアップ!『喧嘩稼業』

前作『喧嘩商売』のレビューはこちら

【あらすじ】
天才的な頭脳と恵まれた体格の佐藤十兵衛は、ヤクザすら倒してのける喧嘩自慢の高校生。だが常人を遥かに超えたパワーとタフネスを誇るプロ喧嘩師・工藤優作に完敗し、人生最大の屈辱を味わう。リベンジのため古武術「富田流」の秘伝を身につけた十兵衛だったが、すでに工藤は最強格闘家を決める優勝賞金100億円のビッグイベント「陰陽トーナメント」にエントリーし、気軽に挑める立場ではなくなっていた。それなら自分がトーナメント出場者を闇討ちし、参加枠をもぎ取ればいい――十兵衛の新たな格闘伝説がはじまった。

【みどころ】
全24巻で終了した『喧嘩商売』の続編にあたり、ストーリーも完全に繋がっている。前作ではシリアスな格闘バトルに下ネタ&ギャグ満載の日常パートが挿入される形式だったが、本作では日常部分がほぼカット。よりバトルに特化した作風へと読者ニーズに応える形で進化を遂げた。

作品の舞台になる「陰陽トーナメント」は、力士や空手家など世間で広く知られる「陽」の格闘家と、喧嘩師や傭兵、古武術使いなど普段は表に出てこない「陰」の格闘家が無差別にぶつかり合い、素手で戦った場合の“最強”は誰かを決める超危険なイベント。ここに当初エントリーから漏れていた主人公の十兵衛が割り込んでいく。

いくら超高校級の強さはといえ、十兵衛はエントリーした他の格闘家より純粋な戦闘力では数段劣る。そこをカバーするのが、『喧嘩商売』『喧嘩稼業』のオリジナリティである“卑怯な悪知恵”の応酬だ。

彼の策略はあらゆる場面で発揮され、読者を飽きさせない。言葉たくにみ相手の心理を操り、必要ならば観客席に潜り込ませたサクラで会場中の客を扇動し、致死性の猛毒さえ迷わず敵に食らわせる。十兵衛は最初から戦いが平等な条件などとは考えていない。使える手段はすべて使い、苦労して身につけた古武術の秘技を出し尽くし、それでギリギリ互角に戦える――そんなパワーバランスなのだ。

どうにか強豪の1人をリングの外で倒してトーナメントに潜り込めた十兵衛は、最新巻(10巻)の時点では1回戦を突破して因縁の相手・工藤との対決を待つ身。その合間にも他の出場者の激闘と、リング外での深い駆け引きが続いている。主人公だけでなく全選手の試合がスリルに満ちていて、ネットでは読者たちが活発に試合展開を予想するなど盛り上がっている。格闘漫画のブームはずいぶん前に過ぎ去ったと思われるが、本作だけは例外のようだ。

青年誌の連載作だけあって残虐な描写があちこちにあり、まず『喧嘩商売』を読んでいることが前提なのでハードルは高いかもしれないが、ワクワク感と格闘描写の濃密さは保証済みだ。このテンションで完結すれば傑作と呼ばれること間違いなしの逸品、気になる人はぜひ手にとってみてほしい。

【作品データ】
・作者:木多康昭
・出版社:講談社
・刊行状況:10巻まで(以下続刊)