圧倒的な“動物ドラマ”でマンガ大賞を獲得!『BEASTARS』

【あらすじ】
ヒトではなく動物が文明をもった世界。主人公はエリート高校2年生のレゴシ(ハイイロオオカミ・雄)。頑強な肉体でありながら気弱でやさしい彼は、演劇部の裏方を黙々と務めていた。そんなある日、彼はひょんなことからハル(ウサギ・雌)と出会い、抑えきれない衝動を自覚する。これは恋愛感情なのか、オオカミとしての捕食本能なのか? まわりの生徒たちにも影響を受けながら、平穏だったレゴシの学園生活は少しずつ変わっていくのだった……。

【みどころ】
とんでもない快作、いや怪作が「マンガ大賞2018」グランプリに輝いた。一見するとただキャラクターを人間から動物に置き換えただけの学園モノだが、そこらの無毒なコメディ漫画だと思って読みはじめると驚くに違いない。

まず世界観が徹底して作り込まれている。登場する動物キャラは言葉を話し、服を着て、お金で買い物してインターネットも利用する。彼らは大きく肉食と草食に分かれ、身体サイズもさまざま。「肉を食べることは禁止(タマゴと乳製品のみ可)」「大型動物は小型動物に道を譲らなければならない」など、私たち人間社会と同じく、弱者に合わせた法律が整備されていたりする。

捕食本能を抑えきれない者のため、違法に肉が売られている「闇市」が街にあったり、そんな不届き者を更生させようとするカウンセラーがいたり、隅々までリアリティが行き届いている。

それらを土台とした人間(動物だが)ドラマが本作最大の見どころだ。オオカミとして秘めた強さを隠しながら生きる主人公。彼が恋してしまったのは小柄な草食のウサギ。そのウサギと肉体関係にあるのは、非力ながら絶対的カリスマでスクールカースト頂点に君臨するシカ。そんなシカやウサギをものともせず、同種族として主人公に想いを寄せる雌オオカミ……いろいろな“濃い”キャラクターたちが三角関係、四角関係を形成し、さらに学園内でご法度である「肉食による草食の殺害」事件が発生中など、次々に新展開が繰り出され読者を飽きさせることがない。

これほど濃密なドラマを描いた作者がどんな経歴なのか気になるところだが、実は本作で長編デビューしたばかりの20代女性。「板垣」という名義から、同じ週刊少年チャンピオンで『刃牙道』を連載している板垣恵介氏の娘ではないかとも噂されている人物だ(公式発表は確認できていない)。

ちょっと絵柄にクセはあるものの、世界観、心理描写、ストーリー構成まで非常に高レベルでまとまっている。良い意味で“チャンピオンらしい”挑戦的な作風だ。今さら擬人化の萌え漫画なんて飽き飽きしてるぜ!などと誤解している人は、ぜひ手にとってみて欲しい。

【作品データ】
・作者:板垣巴留
・出版社:秋田書店
・刊行状況:7巻まで(以下続刊)