傑作コミカライズ『皇国の守護者』絶版が確定

佐藤大輔による架空戦記小説をコミカライズした人気作『皇国の守護者』。2007年に集英社ウルトラジャンプで連載を終え、全5巻が出揃ってから10余年経った本日3月6日、コミカライズ担当の漫画家・伊藤悠が自身のTwitterで正式な絶版を報告した。その後わずか数時間で絶版を惜しむツイートが2万を超え、なおファンの嘆きの声は増え続けている。

『皇国の守護者』は、強大な軍事力で覇権を狙う「帝国」や、日本をモデルにしたと思われる小国「皇国」が存在する架空世界の物語。ドラゴンやサーベルタイガーが人間と共存するファンタジー要素があり、人類の軍事・科学技術は19~20世紀初頭くらいという世界観だ。まだ戦場に航空機は登場しておらず、砲撃や歩兵の突撃、騎馬戦がメインとなっている。

ある時、帝国の大軍が突如として領内に攻め込んできて、迎え撃とうとした皇国は大敗北を喫する。そこから敗残兵を本土へ逃がすため、主人公の新城 直衛は「勢いづく数万もの帝国軍をわずか600人で足止めしろ」と命じられた。死の宣告にも等しい命令を受けながら、新城は部下を鼓舞し、みずから最前線で敵と斬り合い、あらゆる手段をもって任務を遂行しようとする――そんなストーリーだ(原作小説はその後も話が継続する)。

基本的に冒頭からラストまで絶望の状況が続くが、いわゆる「滅びの美学」は本作のテーマではない。小柄で卑怯、臆病というおよそ指揮官に向かない性格を自覚しながら、新城はできるだけ部下を死なせない、また自分も生き延びられるよう最善手を打ち続け、屈強な帝国軍に対抗していく。最善の方法とはいえ、その中には非戦闘員を結果的に死なせるようなこともあり、ダークヒーロー的なキャラ付けもされている。

二転三転する戦況、胸を打つ名ゼリフの数々、そして何より伊藤悠の卓越した筆致によりキャラクターが生き生きと動き、連載当時から注目を集めていた。

そこへきて今回の「絶版が確定。電子コミックも発売予定なし。もし集英社以外から新版が出たとしても、自分(伊藤悠)とは無関係」という内容のツイートだ。ファンの落胆は想像以上だった。絶版の経緯は明らかになっておらず、原作者もすでに他界しているため、今すぐこの状況が好転する見込みはなさそうである。

とはいえ諦めきれないファンが想像以上に多いと判明したこともあり、希望がゼロとは考えたくない。この状況を見かねた他の出版社が権利関係を解決し、何年かかってでも復刊してくれるのを望んでいる。