マンガ大賞2017授賞式レポ(2)柳本光晴「才能を描きたかった」作品誕生秘話を語る

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マンガ大賞2017授賞式レポ・第2弾は、当日舞台に上がった登壇者の談話を中心にお届けします。

→ レポート第1弾はこちら

この日の授賞式の舞台には、受賞作『響~小説家になる方法~』作者の柳本光晴先生、担当編集の待永さんらが上がり、受賞の喜びや作品誕生の裏話などを語りました。

「キャラクターさえ活かせれば成立すると」小説を題材にした『響』

マンガ大賞2017受賞イラスト

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女子高生の小説家の物語である『~響~小説家になる方法』。今回、なぜ“小説”を題材にしたのかと問われ、柳本先生は「野球やサッカーなどのメジャーなやりつくされた題材は、みなさんものすごい取材をされて、相当な勉強も必要だし、とにかく好きじゃないとできない。かといって、誰も手を出していないマニアな題材で作品に偏りをもたせたくなくて、世間一般ではメジャーだけれどマンガではあまり扱われていない題材を探した」ところ、ちょうどあったのが“小説文芸”だったそうです。

文章を紙に起こせないという、他の人が手をつけない理由も思い当たりましたが、「キャラクターさえ活かせれば、成立するのでは」と考えて、小説をテーマにしたとのこと。

柳本先生いわく「才能を、とにかく天才を描きたかった」ということで誕生した同作の主役の響。司会の吉田さんは「感情をかき乱しに来るすごいキャラクター」と評していた響ですが、柳本先生は「インタビューや初めて会う人と話していると、『響に似てるね』という話になるので、自分の中にあるんだと思うんですが、自分ではそんなに強烈なを描いているつもりはない。むしろかわいい子を描いているつもり」と語りました。

芥川賞・直木賞を取材に行くも…

文芸を題材に扱っているだけに、劇中にいわゆる文学賞が登場する『響』ですが、芥川賞・直木賞などの授賞式に取材に行ったのか?聞かれると、柳本先生は、作画資料用に写真を撮ろうと芥川賞・直木賞の記者会見の日に帝国ホテルへ行ったことを明かしました。

ただし、「当たり前なんですけれど、『記者会見場はこちらです』みたいな矢印が出てるわけじゃないんですよね。それに行ってから気がついた。来たはいいものの、どうしていいかわからなくて帰ってきました。だから取材はしていないです」とのこと。この天然エピソードに司会の吉田さんは「先生、“響”感ハンパないですね」と驚いていました。

編集担当の待永さん「いつかこういうときが来ると信じていた」

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柳本先生に続き、担当編集の待永倫さんも授賞式の舞台に登壇。

マンガ大賞の受賞を柳本さんに伝えたのは待永さんだったそうですが、当初、「ドッキリなのでは」などと言われ、なかなか信じてもらえず苦労したそう。「あんなにドッキリだと主張する人を生まれて初めて見た」と苦笑いしていた待永さんですが、作品については「いつかこういうときが来るとずっと信じていた作品」と語り、受賞してからも気持ちが舞い上がりながらも、「1話1話とにかく面白いものを」と心がけ、もちろん柳本先生も作品に集中していったそうです。

柳本先生の担当としては2代目だという待永さん。引き継ぐ際に前任者と編集長から「いつか必ずヒットして報われる作品なので大事にするように」といわれ、また、柳本先生について「“響”のような方と伺っていた」そうで、引き継いだ当初はかなりプレッシャーがあった様子。とはいえ、『響』を一読者として読んでいて、「(柳本先生を)想像を裏切る才能をお持ちの方だと確信し、ファンとして追いかけていたので非常に光栄だった」とのこと。

また、作品がドラマやアニメなど、どの媒体でやってみたいか?と聞かれると、「個人的に見たいのはアニメーション」と答え、理由については「原作のイメージがあり、役者さんが演じるときに響の過剰な行動が抑えられると面白くない。できれば、暴れまわる響を存分に見たいので」と語りました。

また、「絵が下手でも賞がとれると先生が言っていましたが、我々にとっては面白い絵が一番いい絵なので、柳本さんの絵が最高。絵は下手ではありません」ときっちり断言していました。

マンガ大賞「100回200回と続けてほしい」

今年でついに10回目を迎えたマンガ大賞。有志達による手作りの賞として始まった賞ですが、年々その知名度、影響力は広がっており、『ちはやふる』「テルマエ・ロマエ』『3月のライオン』など、歴代の受賞作のメディアミックス展開も活発になってきています。

この日、柳本先生も「ぜひ100回200回と続けてほしい」と語っていましたが、筆者もマンガ好きの一人として、年に一度のこのマンガの祭典が末永く続くことを期待しております!

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関連URL
マンガ大賞2017公式サイト