兎と鬼の愛憎劇!『バトラビッツ』完結!

【あらすじ】
幼い頃、「鬼(オーグ)」に父親を殺された輝夜。引き取られた親戚の家では手酷い扱いを受けていたが、父親の妹だという涼音が迎えに来てくれてからは、愛情を与えられて幸せに暮らしていた。そして高校生になったある日、不思議な事故に巻き込まれて、地球を護る月の民「バトラビッツ」だという少女(幼女?)・マオに出会う。そこで父親の命を奪った鬼によく似た異星人に襲われるが、突然覚醒した輝夜は、マオと同じく、いやそれ以上の力を持つ「バトラビッツ」だったのだ!!

【みどころ】
美少年にウサミミが可愛らしい『バトラビッツ』は、『07-GHOST』の雨宮由樹&市原ゆき乃による新しいコンビ名での初コミックスある。1巻とそれ以降の巻の背中や表紙の仕様が違うのは気にしないことにして、今度は兎(バトラビッツ)と鬼(オーグ)との戦いが幕を開けた。序盤から得意の人情劇を重ね、さらにいよいよ輝夜がバトラビッツの総本部に入るまでコメディタッチの描写も面白い。

回を追うごとに味方のバトラビッツが増えていくが、同様に輝夜を狙う鬼の存在も増えていく。そんな中で、徐々に特別な金色の「ラビジュエル」を持つ「若様」としての自覚が芽生え始める輝夜だったが、実力がまったく伴わない。「もう誰も失わないために強くなる」と決めた輝夜は、総司令官である鷹ノ宮聖の猛特訓を受け、実践を重ねて強くなっていく。バトルアクションの上手さはお墨付きの雨市氏なので、迫力がありつつも美しい絵柄で読者を魅了するはずだ。

そして同じバトラビッツである、星野泉の活躍回も見逃せない。妹のものである、オーキッドローズ色のラビジュエルを持つオーグを、長い間探していた泉。彼がそれをようやく見つけた先にあったものとは?そして輝夜が自分の命と引き換えにしてまで守りたかったものは?輝夜が死神と契約するシーンに登場するフェアローレンの名は「フラウ」。『07-GHOST』愛読者には嬉しい邂逅ではないだろうか。

最終巻では物語が急速に展開する。大きな使命を負って千二百年前に戻り、諸悪の根源を消そうとする輝夜。うまくその軸にたどり着いたものの、何の変化も現れない……。しかし輝夜はようやく気付く。自分の正体を──!!笑いあり、涙ありの『バトラビッツ』は、惜しくも4巻で完結してしまったが、長い物語が苦手な方にはかえってわかりやすく、読みやすいだろう。この尺の中でも、十分に感動が詰まっている名作が、またひとつ誕生したと言える。

【作品データ】
・作者:雨市
・出版社:一迅社
・刊行状況:全4巻