現役鉄道員が描いた『白い弾丸列車』は新幹線擬人化漫画!

【あらすじ】
新幹線──それは世界一の鉄道技術を持つ、日本の高速鉄道の名前。鉄道の使命は、街と町、人と人を「つなぐ」ことである。そんな新幹線の頂点に立つ東海道新幹線は、ある日をきっかけに「つなぐ」ことをやめてしまう。日本の大動脈の彼を必要としている人々のために戻ってくるように、いなくなった0系の代わりにリニア新幹線の話をされ、東海道新幹線はそこに希望を見出すが──?

【みどころ】
国やら戦艦やら鉄道やら、擬人化コミックが人気を博している昨今だが、また新たなる新星が現れた。「第5回このマンガがすごい!WEB」で最終選考ベスト6に入った『白い弾丸列車』だ。これは現役鉄道員という肩書を持つ作者が描く、リアルかつ切ない新幹線の擬人化漫画である。夢を作り、夢を叶える存在……それが新幹線!!そんな彼らの関係を浮き彫りにしつつ、主に東海道新幹線と「はやぶさ」にスポットを当てている。

山陽新幹線は例に漏れず苦労人でお節介。東海道新幹線にリニアの話をして戻らせたのも彼だ。九州新幹線は東海道新幹線とは不仲だが、名古屋で行われる班長会議に出席するために、「さくら」と「みずほ」を連れて行く。そんな中で偶然彼女たちに出会った、東北新幹線「はやぶさ」。日本一早い新幹線だ。はやぶさはさくらに既視感を覚え、不思議な感覚に包まれる。まだ誰も教えてはくれなかったが、実はかつて二人はともに国をつないだ仲だった。「長距離寝台列車・九州ブルートレイン」……それが「さくら」と「はやぶさ」だったのである。

はやぶさがデビューした一週間後、さくらのデビューのはずだったのだが、その前日に東日本大震災が発生。九州新幹線はそれに負けじと全線開通し、山陽新幹線との直通運転を開始した。人と人を「つなぐ」ために──!しかしはやぶさは走れなくなってしまった。再開の目処も立たない中、東北新幹線に「オレは何をしたらいいですか」と訊ねる。しかし、返答は「邪魔だ」の言葉。どうすれば良いのか悩み、落ち込んで泣いていたはやぶさの前に現れたのは、東海道新幹線だった。

東海道新幹線に鉄道の何たるかを説かれるはやぶさ。みんながはやぶさを認めてくれないのは、彼が「ヘタレ」だからだと言われる。走ることは手段であって目的ではない──それはつなぐためなのだ。そして自分の使命を思い出し、走る準備を始めるはやぶさ。さくらに会いに行くと、「一度九州にいらしてください」と言われる。何か思い出せることがあるかも知れないからと。そして震災から49日目、東北新幹線は全線運行再開する。ようやく青森から鹿児島までが、新幹線でつながったのだった!!

【作品データ】
・作者:白桜悠都
・出版社:一迅社
・刊行状況:全1巻