日本独自の部活文化の美徳。本格高校サッカー漫画『エリアの騎士』

すっかり冬の風物詩として定着した全国高校サッカー選手権大会。今年で94回目を迎えた同大会は、例年以上に注目を集めた。超進学校であり、文武両道の國學院久我山。部員数280人というマンモスチームの東福岡。シンプルかつわかりやすい構図で、報道各社も両校の特集を組み、決勝にはなんと54,090人もの観客がスタンドから試合の動向を見守った。

なぜ、プロではない高校スポーツがここまでの巨大コンテンツとして成立するのか?その答えは、スポーツの世界では時には弊害としても指摘される、「部活」という文化が人々の共感を集めるからではないか。

今回紹介する『エリアの騎士』は、高校生のプレーヤー達の成長を描くサッカー漫画。主人公である逢沢駆が、将来を約束された逢沢傑の意志を継ぎ、ストライカーとして世界を目指していく。サッカー版『タッチ』といえばわかりやすいかもしれない。

スポーツ取材をする機会が多い筆者が強く惹かれたのは、アスリートとしての葛藤とメンタル面に集点を当てた構成面だ。高校世代の若者は、ちょっとしたキッカケを掴むことで劇的な成長を遂げることがある。エリートでなかった逢沢駆も、兄の死など数々の壁を乗り越え、全国大会で見事優勝を果たす。現実ではありえないようなスーパープレイがゲームを決めるエンターテイメント性に富む描き方も、魅力に感じる読者も多いはずだ。ちなみにアニメ化もされているので、気になる方はチェックして欲しい。

追記となるが、週刊少年マガジンでは、本作の他に『DAYS』という同じく高校サッカーを舞台にした連載が人気を得ている。現役の日本代表選手達も、その大半は高校サッカーの出身。日本独自の文化でもある、部活の美徳。本作にはその醍醐味が詰め込まれている。

【作品データ】
・原作・原案:伊賀大晃 作画:月山可也
・出版社:講談社
・刊行状況:49巻まで