鬼才・山口貴由の最新作『衛府の七忍』 待望の第1巻発売!

【あらすじ】
時代は徳川家康が天下を獲った江戸初期。豊臣家を根絶やしにしようと目論む家康は、配下の武士や無法者たちに徹底した残党狩りを命じた。豊臣の血を継ぐ者、かつて豊臣家に仕えた者……すべて惨殺されたかに見えたが、ごくわずかな者は死を拒絶し“怨身忍者”となってこの世に蘇ってきた。異形の装束をまとい、悪党たちも震えるほど残忍な術を駆使する新ヒーローたちが、徳川の治世に牙をむく――!

【みどころ】
『覚悟のススメ』などで知られる鬼才・山口貴由が2015年に連載開始した最新作、『衛府の七忍』の初単行本がこのほど発売された。

舞台設定こそ時代劇のようだがオカルト要素が強く、ゾンビめいた蘇り方をするヒーロー、老人を若返らせる薬、はては古代の英雄(吉備津彦命=桃太郎)まで登場するなど非常にカオス。個性的なキャラたちが敵味方に分かれて戦う、エネルギーあふれる娯楽アクション作品になっている。

タイトルが示す通り主人公は本作に7人登場する予定らしく、およそ3話スパンでヒーローの誕生が描かれている。各主人公のネーミングは「葉隠谷のカクゴ」「動地家の憐」など、過去の山口作品に登場したキャラを連想させる。まだ連載開始から日は浅いが、いずれ“七忍”が揃って徳川家に挑むものと思われる。

思い返せば過去2つの山口作品、『シグルイ』『エクゾスカル零』はダウナー系の作風だった。激しいアクションと独創的なセリフまわしこそ印象的だったが、それ以上に“鬱々しいストーリー展開”“救いのない結末”が心に残った読者も多いはず。しかし本作では心機一転、1990年代に描かれた出世作『覚悟のススメ』を思い出させるカタルシス満載の仕上がりとなりそうだ。

エロ、グロ、バイオレンス、そしてコメディ……いまやベテランの域に達した鬼才が原点回帰ともいえるエンタメ要素の大盤振る舞いを見せる本作は、山口貴由のファンならずとも一読の価値ありとオススメしたい。

【作品情報】
・作者:山口貴由
・出版社:秋田書店
・刊行状況:1巻まで(続刊)