【あらすじ】
誰とも親しくしようとしない羽曳野凛(はびきの・りん)の周囲では、何故かよく人が死ぬ。「あいつに近付いたら死ぬ」といじめに遭う凛は、慣れながらも心の痛みは増すばかり。そんな中、腹違いの兄弟の桐条緋生(きりじょう・ひなせ)が凛をかばって死んでしまう──!タロットのアルカナに例えると、「死神」であるという凛は、包帯を巻いた謎の男「導く者」に緋生が生き返る方法を聞く。儀式を終えて緋生が言い放ったのは、「お前は、俺のためだけに生きろ」という言葉だった。一番死んでほしくなかった唯一の家族、緋生を殺さないために、凛は緋生のために生きると誓うが……。
【みどころ】
「ナビ」こと「導く者」の説明によって、不思議な世界観でもわかりやすくなっている、ネクロマンサーの物語。生き返って「死狗(イヌ)」となった緋生は、白のアルカナに狙われて、たびたび危険な目に遭う黒のアルカナである凛を救う。アルカナは違う色の死狗の心臓の血を飲まなければ、やがて衰弱して死ぬと聞かされる。そして、主が死ねば死狗も死ぬ──。
絶望の淵に立たされる凛は、同じく血を飲もうとしない白のアルカナである少年・心(こころ)と出会い、心を通わせていく。しかし、彼の死狗である心の父が、日増しに衰弱していく心のために、快楽殺人者である「女皇帝」に救いを求め、凛を監禁してしまう。凛と連絡が取れずに焦る緋生。やがて「正義」のアルカナの協力を得て、凛に辿り着く緋生だったが、思うように力を発揮できない。
「導く者」が言うには、死狗は少しずつ記憶もなくなっていくことがわかった。そして「導く者」の正体が──!!黒・白・灰色の組織も絡んでくる中、緋生を生き返らせる方法を知るために、灰色の教会に突入する凛と緋生。そこには先代の「死神」である、凛と緋生の父が眠っていた。彼を助け出す二人だったが、教会側に火をつけられ命からがら逃げ出す。先代の「死神」と、「導く者」の哀しい関係も明らかになるが、その時はすでに遅く……。
まだまだ続けられそうな物語だったが、全3巻となっている。くさなぎ俊祈氏の美麗な絵は相変わらず。『メメント・モリ』とは「死を想え」という意味。そして「生きるということを心に留めよ」と「導く者」は言う。大事な人を守るために戦う凛と緋生の、かけがえのない「生」を最後まで見届けたい。
【作品データ】
・作者:くさなぎ俊祈
・出版社:一迅社
・刊行状況:全3巻