食材は“魔物”……! 異色グルメマンガ『ダンジョン飯』

【あらすじ】
主人公のライオスはダンジョン攻略に臨む冒険者である。ある日ダンジョンの最深部でドラゴンに襲われ、命からがら逃れたものの妹を残してきてしまった。ドラゴンの腹の中にいる妹を急いで助けるため、再びダンジョン攻略に臨むライオス一行。携帯食料を準備する余裕のない彼らは立ちふさがる魔物を倒し、その魔物を食しながらダンジョンの奥へと進んでいく“自給自足”の道を選んだ……。架空の生物である魔物の調理法が事細かに記され、不気味な魔物料理が何故か美味しそうに見えてくる新感覚グルメマンガ。

【みどころ】
表紙も冒頭も一見、純粋な冒険ファンタジー物のようで騙されるが、中身は完全にグルメマンガである。グルメマンガといっても、「美味しそうだからためしに私も作ってみよう」とはならない。何故なら材料が、大サソリや歩きキノコ、バジリスクだから。妹を助け出すという目的を忘れているのではないかと思うほど、メインは魔物をどう調理するか、どう魔物から栄養を得るかという話だ。そしてどう考えてもゲテモノ料理なのに、悔しいかな、とても美味しそうに描かれている。

特に動く鎧を調理する話は秀逸だ。動く鎧はどこか遠くで魔術師が動かしているだけで、動く鎧自体は生物ではないと考えられていた。しかし実は鎧の内側に軟体生物が何体も入って身を守りながら鎧を動かしていて、彼らは卵から生まれるというのだ。その見た目は貝のようであり、醤油で焼いた「焼き動く鎧」は焼き牡蠣のようで読んでいて食欲がそそられる。

魔物料理を嫌がっていたパーティメンバーの女魔法使い・マルシルと同じように、はじめは読んでいて抵抗のあった魔物料理がだんだんと、「どうして現実に魔物がいないんだろう。ダンジョン飯を食べてみたい」と思えてくる不思議な魅力のあるマンガなのである。

【作品データ】
・作者:九井諒子
・出版社:KADOKAWA
・刊行状況:1巻(続刊)